トップオピニオン社説6月日銀短観 コスト高の広がりに要注意【社説】

6月日銀短観 コスト高の広がりに要注意【社説】

 大企業製造業では5四半期連続で景況感が改善するなど堅調を維持し、大企業非製造業の景況感も高い水準を続けている。ただ、先行きは中東情勢の影響によるコスト高への懸念から悪化を見込む。円安の進行で輸入コストがさらに上昇すれば、消費への影響が憂慮される。政府・日銀は過度な円安進行に断固たる措置で臨んでもらいたい。

中東情勢でも堅調を維持

 6月の日銀全国企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業製造業がプラス22と、前回3月調査から5ポイントの上昇で、5期連続の改善となった。大企業非製造業のDIもプラス37と1991年8月以来の高水準を示す。

 改善の理由は、製造業では人工知能(AI)・半導体関連の需要拡大に加え、価格転嫁の進展や中東情勢による原材料の調達難を見越した前倒し需要が寄与。非製造業ではインバウンド(訪日客)需要の増加もあって、宿泊・飲食サービスや小売りでの改善幅が大きかった。もっとも、燃料の値上がりや人手不足による人件費上昇などのコスト増加が重しとなり、全体の景況感改善は1ポイントにとどまった。

 今回の調査は回収基準日が6月11日で、米国とイランの戦闘終結に向けた覚書署名による緊張緩和は十分に織り込まれていない。今短観の結果からは、中東情勢緊迫化の下でも堅調を維持していることがうかがえ、企業は想像以上に柔軟に対応しているようだ。今年度設備投資計画が大企業製造業で前年度比10・1%増、大企業非製造業では同12・3%増と2桁の高い伸びを見せているのも心強い。

 懸念は、ある。米イランの覚書締結による緊張緩和の好影響に期待はするものの、協議の行方が依然見極めにくいこと、そして、そのため原油やナフサの供給混乱によるコスト上昇がすぐには収まりにくいことだ。先行きの景況感が、大企業製造業で5ポイント、非製造業では9ポイントの悪化を見込むのも、このためだ。

 今短観では、企業が価格転嫁の動きを積極化していることが示され、大企業の販売価格判断DIが製造業、非製造業ともプラス40と高い水準となったが、今後も価格転嫁を進められるかどうか。進まなければ企業収益が圧迫され、一方、進んだとしても消費者にとっては値上げの継続となり、消費を下押しする恐れもある。また、製造業で改善の一因だった前倒し需要の反動減がどの程度表れるか。

 特に消費の行方は要注意だ。企業物価は上昇傾向を続け、5月は前年同月比6・3%上昇した。帝国データバンクによると、7月に値上げ予定の飲食料品は2566品目に上り、原油・ナフサ高を受けたトレーやフィルムなどの包材価格や原材料の値上がりの影響が表面化している。1㌦=160円台を付ける最近の円安水準から輸入コストの上昇も値上げ要因となろう。

追加利上げや為替介入も

 日銀は先月に利上げを実施したばかりだが、引き続き景気や物価、為替動向を注視し、追加利上げを含め適切な対応を望みたい。過度な円安へは介入を含む断固とした対応も必要だ。

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