トップオピニオン社説米建国250年 信仰と理念が支えた歩み【社説】

米建国250年 信仰と理念が支えた歩み【社説】

 米国は独立宣言採択から4日で250年を迎える。内戦や世界大戦、経済危機、テロとの戦いなどの試練を乗り越え、政治、経済、科学技術の分野で世界をリードしてきた。その歩みを支えたのが、信仰と理念だ。

 類を見ない多様な人々

 独立宣言を採択した1776年、13植民地の指導者たちは当時の大英帝国に挑み、新国家の建設を目指した。その際に掲げたのが「すべての人は平等に創られ、創造主によって侵すべからざる権利を与えられている」という普遍的理念だった。

 この理念はその後、世界中から自由と機会を求める人々を引き寄せた。こうして、世界でも類を見ない多様な人々によって築かれた国家となった。

 それでも、一つの国家への帰属意識によって、分裂の危機を免れてきた。米国のモットーの一つであり国章にも刻まれている「エ・プルリブス・ウヌム(多数から一つへ)」は、まさにその国家理念を表している。

 だが近年、この基盤が揺らいでいる。共通の国民意識よりも、人種やジェンダーといった属性を強調する、いわゆる「アイデンティティー・ポリティクス」が社会の分断を深めている。

 それを象徴する動きが、奴隷制の始まりを米国の出発点と位置付ける「1619プロジェクト」だ。これは、人種間の対立を煽(あお)り、分断を助長しかねない取り組みだ。

 建国時には奴隷制が存在するなど、理念と現実の間には隔たりがあった。しかし、「万民の平等」を掲げた理念は、その後、南北戦争や公民権運動を通じて、差別の是正や権利の拡大を促す原動力となった。

 この事実こそ、強調されるべきである。

 宗教的基盤に立ち返ろうとする動きも強まっている。建国250年に向けた大規模な野外祈祷(きとう)集会が5月に行われ、トランプ大統領や主要閣僚らがビデオメッセージを寄せた。

 一方、こうした動きに対しては政教分離に反するとの批判もある。しかし、本来のそれは、政府による特定宗教の優遇や信仰の強制を禁じるものであって、宗教を公共の場から排除することを意味するものではない。

 独立宣言は権利の根源を「創造主」に求め、大統領は就任式で聖書に手を置き宣誓する。また米国には、独立戦争や南北戦争に際して祈りと悔い改めを呼び掛けるなど、信仰によって国難を乗り越えてきた伝統がある。分断が進む今こそ、社会を支える共通の基盤としての信仰の役割が見直されるべきであろう。

 日本にも及ぶ影響

 米国の自由と権利の理念は、日本を含む多くの国に影響を与えてきた。「天は人の上に人をつくらず」で知られる福沢諭吉に代表される思想家たちも、近代的な市民社会を模索する中で、米国の理念に学んだ。両国は第2次世界大戦で激しく対立したが、戦後は自由や民主主義という価値を共有し、強固な同盟関係を築いてきた。

 だからこそ、米国の分断は遠い国の問題ではない。建国理念をいかに現代に引き継ぎ、多様な社会を束ねていくのか――その行方を注視したい。

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