高市早苗首相は、首相官邸で開かれた総合海洋政策本部で、2027年度に北極政策の指針「我が国の北極政策」を改定する方針を示した。
北極圏では近年、中国やロシアが航路の確保や資源開発など進出の動きを強めている。安全保障面を含む対応強化が求められる。
存在感高める中露両国
首相は赤間二郎海洋政策担当相に「北極政策における国際連携の推進に資するよう、作業に着手してほしい」と指示した。北極圏で存在感を高める中露両国に、同盟国や同志国と共に対抗する狙いがある。
北極圏を巡っては、地球温暖化に伴う海氷の減少で戦略的重要性が高まっている。トランプ米大統領がデンマーク自治領グリーンランドの領有を目指しているのも、ミサイルの早期探知・追跡能力向上といった安全保障の強化やレアアース(希土類)や鉄鉱石などの資源確保を念頭に置いているからだ。
一方、中国は18年1月に初の「北極政策白書」を公表。巨大経済圏構想「一帯一路」の一環として、ロシアと共に「氷上シルクロード」建設に取り組んできた。「雪竜」などの砕氷船やノルウェー領スバルバル諸島の北極観測拠点「黄河基地」を活用している。米国防総省は24年7月に公表した新たな「北極戦略」で、中国の砕氷船派遣に対して「科学研究を隠れみのに軍事目的の調査を行っている」と批判した。
また北極圏で最大の領土・領海を有するロシアは、ウクライナ侵攻で大きな損害を出しつつも、北極圏の海・空軍戦力は維持してきた。北極沿岸では軍事施設の増強を続けている。国際法を軽視しがちな権威主義国の中露両国が、北極圏で影響力を強めれば、自由で開かれた海洋秩序が脅かされ、安全保障上の脅威が高まる恐れもある。日米などの民主主義陣営は、北極圏における「法の支配」の確立に向けて連携を強化しなければならない。
日本は、北極圏8カ国が1996年に設置した「北極評議会」に2013年からオブザーバー参加し、科学技術面などで北極政策に関与してきた。今後の柱となるのは、海洋研究開発機構の北極域研究船「みらいⅡ」の活用だ。
今年度中に就航を予定しているみらいⅡは、北極研究向けでは国内初の砕氷機能を持ち、詳細な氷の状態調査や気象観測が可能で、航路開拓などに貢献できる。国際研究の拠点ともする方針だ。北極政策の強化につなげる必要がある。
レアアース商業化を急げ
首相は総合海洋政策本部で、政府が進める南鳥島(東京都小笠原村)周辺海域のレアアース採掘にも言及。採算性の向上と精錬技術の開発のため、速やかに本格的な実証実験を開始するよう関係閣僚に指示した。
首相の台湾有事発言に反発する中国は、レアアースを含む軍民両用品の対日禁輸措置を取っている。南鳥島周辺でのレアアースなど鉱物資源の開発は、日本の経済安全保障強化に欠かせない。商業化に向けた動きを加速すべきだ。






