中国・大連で5月、日本人2人が拘束されたことが明らかになった。国家輸出入禁止貨物密輸罪に抵触した疑いというが、詳細は不明だ。
これまで中国ではスパイ容疑で邦人が拘束される事例が相次いできたが、具体的な容疑内容や証拠が明示されないまま実刑判決が下されることが多い。邦人拘束を巡って法が恣意(しい)的に運用されているとすれば容認できない。
詳細な理由を明示せず
2人は富士電機の社員で、レアアース(希土類)の輸出管理規制違反の容疑をかけられたとの見方が有力だ。しかし、中国側は詳細な理由を明示していない。中国は、昨年11月の高市早苗首相の台湾有事発言に激しく反発し、今年に入ってからレアアースを含む軍民両用品の対日輸出規制を強化している。
日本外務省は今回の事案について「現地の法令に違反したものなのか見極める必要がある」として情報収集を進めている。ただ、これまでの邦人拘束の事例を見ても、中国当局による恣意的なものではないかとの疑いは消えない。
「国家安全」を重視する習近平政権は、スパイ摘発を強化するため2014年11月に反スパイ法を制定。制定後にスパイ容疑で拘束された邦人は少なくとも17人に上り、12人が実刑判決を受けた。
さらに23年7月に施行された改正法は、従来の「国家機密」に加えて「国家の安全や利益に関わる文書やデータ、資料、物品」も取り締まり対象とし、恣意的運用が強化されると懸念されてきた。
23年3月にスパイ容疑で拘束されたアステラス製薬の日本人男性社員は、25年7月に懲役3年6月の有罪判決を言い渡された。判決ではスパイ活動の内容について具体的な説明はなかったという。
富士電機社員の拘束を受け、中国へ進出した日本企業の間で不安が広がっている。中国商務省は今月、軍民両用品の輸出管理規制を厳格に運用するため、通報制度を強化すると発表。違反を見つけた場合、当局に通報するよう求める内容で7月から施行する。今後も拘束される邦人が出る可能性がある。
高市首相の台湾有事発言後、中国は日本で「新型軍国主義」が台頭していると主張。5月の中露首脳会談ではロシアも同調し、会談後に署名した共同声明で「日本の急速な再軍備路線は地域の平和と安定に深刻な脅威をもたらしている」と記した。
中国は情報戦や軍事的・経済的威圧などのさまざまな手段で高市政権を揺さぶろうとしている。今回の邦人拘束の背景にも、中国の反日姿勢があるのではないか。
スパイ防止法制定を急げ
中国の邦人拘束に対し、これ以上手をこまねいているわけにはいかない。救出の決め手の一つとなるのはスパイ防止法の制定だ。同法があれば、逮捕した中国人スパイと拘束された邦人を交換することができる。
今国会では、政府のインテリジェンス(情報収集・分析)能力強化を目指す「国家情報会議」設置法が成立した。スパイ防止法の制定も急ぎたい。






