トップオピニオン社説「危険運転」明確化 悪質運転に厳正な対処を【社説】

「危険運転」明確化 悪質運転に厳正な対処を【社説】

 危険運転致死傷罪の適用要件を明確化するため、数値基準を導入する改正自動車運転処罰法が成立した。

 危険運転致死傷罪は法定刑の上限が拘禁刑20年で、同7年の過失運転致死傷罪より重い。しかし現行法では「進行を制御することが困難な高速度」などと要件が曖昧なため、適用の判断にばらつきがある。法改正を悪質な運転への厳正な対処につなげる必要がある。

 速度などの数値定める

 改正法では危険運転の適用基準として、最高時速60㌔以下の道路(主に一般道路)で50㌔以上、60㌔超の道路(主に高速道路)で60㌔以上の超過と規定。飲酒運転に関しては①呼気1㍑当たりアルコール0・5㍉㌘以上②血液1㍉㍑当たりアルコール1・0㍉㌘以上――とした。これはビールの大瓶2本を飲んだ状態に相当する。

 こうした基準を下回る場合でも「重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度」「アルコールの影響で正常な運転が困難な状態」で死傷事故を起こした場合は適用の対象となる。タイヤを意図的に横滑りさせる「ドリフト走行」も危険運転に含めた。

 改正法は今夏にも施行される見通しだ。警察は適用基準を周知徹底し、悪質な運転を抑止しなければならない。

 危険運転致死傷罪は、1999年に東名高速道路で飲酒運転のトラックが乗用車に追突し、3歳と1歳の女児が死亡した事故をきっかけに2001年に創設された。トラックの運転手が業務上過失致死傷などの罪で懲役4年の刑を受けたことに対し、事故で重軽傷を負った女児の両親らが悪質運転の厳罰化を求める運動を展開したことも創設に寄与した。

 だが成立のハードルが高く、過失運転致死傷罪の適用にとどまるケースが少なくなかった。大分市で21年、当時50歳の男性が最高速度60㌔の一般道で乗用車を運転中、194㌔で走行する対向車に衝突されて死亡した事故では、起訴された当時19歳の元少年に対し、一審では危険運転罪を認めて懲役8年としたものの、二審では危険運転の要件に当たらないとして懲役4年6月を言い渡した。この判決に対し、遺族らからは「一般常識と懸け離れている」として法改正を求める声が上がった。

 ただ今回の改正でも数値基準が高いため、厳正な処罰が下されるか課題が残る。たとえ基準を満たしていないとしても、悪質性が高い場合は危険運転致死傷罪の適用をためらうべきではない。

 一方、衆院法務委員会は改正法案可決の際、スマートフォンなどを運転中に使う「ながら運転」の危険運転への追加などを検討するよう求めた付帯決議を採択した。昨年1年間で、ながら運転が要因となった死亡・重傷事故件数は過去最多の148件に上った。このうち死亡事故は26件を占める。

 不断の見直しが不可欠

 ながら運転による事故は重大な過失であり、危険運転に含めることが欠かせない。

 悪質運転の撲滅に向け、法制度を不断に見直すことが求められる。

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