トップオピニオン社説日銀利上げ 物価の上振れに妥当な判断【社説】

日銀利上げ 物価の上振れに妥当な判断【社説】

 日銀が政策金利を「1%程度」へ引き上げることを決めた。中東情勢を受けた原油高の影響で、物価が上振れするリスクがあるとの判断からだ。企業物価が急上昇しており、利上げ決定は妥当な判断と言える。

 米国とイランが戦闘終結の覚書に合意したが、その影響は依然残り、今後は消費者物価への波及も懸念される。日銀は引き続き物価動向を注視し、適切な対応を心掛けてほしい。

 企業物価6・3%上昇も

 利上げは昨年12月会合以来、4会合ぶりに行われた。今回は植田和男総裁が病気治療で入院中のため不在の中で決める異例の事態で、採決は残る政策委員8人で行い、浅田統一郎審議委員が利上げに反対し、7人が賛成した。

 企業物価がこのところ急上昇しており、利上げは当然といえ妥当な対応である。企業物価の上げ幅(前年同月比)は、米イスラエルが月末にイランを攻撃した2月は2・0%だったが、その後は3月2・6%、4月5・3%と月を追うごとに拡大。5月は6・3%と2023年3月以来3年2カ月ぶりの高い上げ幅となっている。

 中東情勢の影響で原油価格が高止まりし、ホルムズ海峡の事実上の封鎖からナフサなどの供給不安も広がり、石油・石炭製品のほか化学製品など幅広い品目で値上がりの動きが広がっているからだ。また、中東の生産拠点が攻撃を受けた影響でアルミニウムなど非鉄金属も大幅に上昇した。

 日銀は「原油・ナフサ市況の上昇が、川上の製品から少し川下のところに波及してきている」とみて、価格転嫁の動向を注視する姿勢を示す。遅かれ早かれ、消費者物価への波及は必至と言える。

 利上げ決定後、記者会見した内田真一副総裁が「物価の基調的な上昇率が2%の目標を超えて上振れていくリスクがある」と懸念するのも当然である。

 4月下旬の金融政策決定会合の議事要旨によると、委員の一人は「(景気を刺激も抑制もしない)中立金利までまだ距離があり、今後、数カ月に一度のペースで利上げを続ける必要がある」と指摘している。事実、今回の決定会合で0・25ポイントの利上げを決めた。

 日銀は現在、中立金利を1・1~2・5%程度とみており、利上げの余地はあるということである。

 内田副総裁は景気の下振れリスクについて「ひと頃よりも低下した」と語り、今後の金融政策運営では「経済・物価情勢に応じて引き続き政策金利を引き上げる」と利上げ路線を継続する考えを表明している。

 過度の円安進行に介入も

 政策金利1%は1995年9月以来、約31年ぶりの水準だ。節目となる1%への利上げに踏み切ったことで、日本でも「金利ある世界」が本格化する。

 とはいえ、「利上げ後も金融環境は緩和的な状態にある」(内田副総裁)のは確か。円相場は1㌦=161円台まで下落し、為替面からも物価上昇リスクが懸念される状況になってきた。政府・日銀は過度の円安進行には、介入も含め果断かつ適切に対処してもらいたい。

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