
北海道・知床半島沖で2022年4月、観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」の乗客乗員計26人が死亡・行方不明となった沈没事故で、業務上過失致死罪に問われた運航会社社長、桂田精一被告に、釧路地裁は禁錮5年の実刑判決を言い渡した。
船の運航では船長の権限が強いため、海難事故では船長の責任が問われるケースが多いが、今回の判決では運航管理者の責任に厳しく言及した。運航に携わる全ての関係者は、事故の教訓を胸に刻むべきだ。
地裁「容易に予見できた」
釧路地裁は、事故当日の午後は運航基準を明らかに超える強風と高波が予想され、同業他社も午後の航行は中止するようカズワンの船長に伝えていたことから「乗客の安全に危険が及ぶと容易に予見できた」と判断。運航管理者の立場にあった被告は、船長に運航中止を指示すべき義務があったのに怠ったとした。船長と協議した上で通常よりも短いコースで運航する認識だったなどとする被告の供述については「不自然、不合理で到底信用できない」と退けた。
沈没の経緯については、ハッチが閉まらない不具合があり、荒天により船体が動揺したことで海水が流入したと指摘した。国の代行機関「日本小型船舶検査機構」(JCI)による事故3日前の検査では、ハッチの開閉試験を省略しており、こうしたずさんな検査が事故を招いたことは確かだ。一方で釧路地裁が、事故の直接的な原因は、強風や高波が予想される中で運航したことだと認定したことは妥当な判断だと言えよう。
運航管理者は航行中、原則事務所にいなければならないが、被告は事故当日、病院に行っていたため事務所を離れていた。代わりに事務所で連絡を受ける運航管理補助者の社員も当日は不在だった。
多くの人命を預かる立場でありながら極めて無責任だと言わざるを得ない。釧路地裁が「被告の過失は、安全を軽視する平素からの態度が形になって表れたものだ」と指摘するとともに「法定刑の上限に当たる刑をもって臨むほかない」としたのは当然だ。
ただ禁錮5年の量刑については、乗客の家族から「(26人の)命の重さに見合うものと受け止められない」との声が上がっている。事故を予見できたにもかかわらず、危険を放置して多くの死者を出したのであれば重大な過失であり、このような場合の量刑引き上げも検討すべきではないか。
安全最優先の原則徹底を
今年3月には沖縄県名護市の辺野古沖で船2隻が転覆し、同志社国際高(京都府京田辺市)の女子生徒ら2人が死亡する事故が発生した。知床の事故を契機に海上運送法が改正され、旅客定員が12人以下の小型船を利用し、日程やダイヤを定めず人を運送する事業を営む場合、事業登録が義務付けられるようになったが、転覆した船の運航団体「ヘリ基地反対協議会」は登録をしていなかった。さらに事故当時、現場付近は風速4㍍で波浪注意報が出ていた。
これ以上、痛ましい事故を繰り返してはならない。安全最優先の原則を徹底すべきだ。






