トップオピニオン社説デジタル教科書 紙との適切な使い分けを【社説】

デジタル教科書 紙との適切な使い分けを【社説】

 デジタル教科書を正式な教科書とする改正学校教育法などの関連法が成立した。採択するか否かの最終判断は自治体の現場に委ねられることになった。

 「国家百年の計」と言われる教育問題。デジタルという新しさに目を奪われて軽々に判断することなく、もっと深掘りした議論を行う必要がある。

 教育界は大きな移行期

 いま教育界は、教員が教壇に立って授業を進める明治以来の一斉教育から、文部科学省が推し進める「GIGAスクール構想」、情報通信技術(ICT)機器を使った個別最適な授業に軸足を移そうとしている。文科省は今秋にもデジタル教科書導入の大臣指針を示す予定だ。

 教科書は「紙」「紙とデジタルのハイブリッド」「完全デジタル」の形態から各地域の実情に応じて教育委員会が選択することになる。実情とは、少子化で教員が不足している、専門教科の担当教員が少ない、支援が必要な児童・生徒がいる、などの理由で授業が進まない地域や学校もあるということだ。

 デジタル教科書は2030年度以降、小学校から順次導入されていく予定だ。導入に向け、メリットとデメリットを精査し、子供の成長に資するものになるよう検討を重ねてほしい。

 メリットは短時間で大量の情報を入手できることだ。また算数で図形の展開図を学ぶ際、平面から立体への変化を視覚的に再現できる。グラフの問題も理解しやすい。教員の中には英語の発音を苦手としている人もいるが、ネイティブの発音を授業に取り入れることもできる。教員の成り手が少ない地域ではインターネットを経由した授業も可能になる。

 文字を見やすくする拡大表示や、音声読み上げが可能ということも特別な支援が必要な子供には欠くことのできない点だ。基本的な情報を習得した上で思考、判断、表現の力を磨くため、デジタル教科書は必要不可欠の道具になり得る。小中学校では既に「代替教材」として導入されている学校もある。

 デメリットは簡単に得た記憶は簡単に忘れ去られやすい点だ。生まれた時からスマートフォンなどのネット端末が身の回りにあるα世代(10~24年ごろに生まれた世代)に、ICT機器の使い過ぎによる集中力の欠如が起きているのも事実である。デジタル化によって教育の基本である読む・書くという時間が失われることも危惧される。目が悪くなったり、姿勢が悪くなったりすることのほか、ブルーライトの脳に与える影響なども気になるところだ。

 地域や学校によってはネット回線と端末機器との接続環境が不十分な場合もある。ハード面での整備が進んでいる地域との格差解消が不可欠である。

 使える学年・教科精査を

 学習の基本を定着させる時期である小学校低学年、中学年の児童には紙中心または紙のみの教科書が望ましいと言われる。高学年以上、中学校などでは便利なツールとして使用できるだろう。紙かデジタルかという二項対立ではなく、使う学年、教科、地域、学校の特性を深く検討しながら適宜使い方を判断してほしい。

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »