経済産業省が2040年代までに原発を2~5基建て替える目標案をまとめた。原発を活用する政府方針を数値目標として示し、原子力産業の人材確保を促すことが狙いだ。エネルギー安全保障の強化につなげたい。
福島事故後初の数値目標
原発建て替えの数値目標を示すのは、11年の東京電力福島第1原発事故以降で初めて。今後、政府の原子力関係閣僚会議で正式決定する見通しだ。
政府の試算によると、運転開始から60年が経過した原発の廃炉で、40年代に電力の供給力不足が見込まれる。必要な原発の設備容量は220万~550万㌔㍗で、経産省はこれに見合う建て替え目標を打ち出した。50年代までには計11~14基の建て替えが必要だとも指摘した。
建て替え目標を示した背景には、AI(人工知能)の急速な普及などで電力需要の増加が見込まれることがある。電力広域的運営推進機関(OCCTO)は、50年時点の電力需要は22年より45%多い1兆2500億㌔㍗時に上ると試算している。
一方、電源の約7割を占める火力発電は、燃料を外国からの輸入に依存している。中東情勢の悪化に伴うホルムズ海峡の事実上の封鎖によってエネルギー安全保障上の懸念が高まっている。再生可能エネルギーは発電量が天候に左右されやすいほか、大規模太陽光発電所(メガソーラー)は自然環境への影響などが問題視されている。こうした中、「準国産エネルギー」と位置付けられる原発の活用を拡大する重要性は増している。
政府は25年2月に閣議決定したエネルギー基本計画で、原発を「最大限活用」する方針を明記した。福島の事故以降、「依存度を低減する」としてきたものを転換した。国内の電源構成に占める原発比率は、24年度の9・4%から40年度に2割程度へ引き上げる目標を掲げている。
原発の建設には20年程度かかるため、40年代の建て替えに間に合わせるには今から調査に着手しなければならない。また、建て替えを進めるには人材育成が急務だ。原発建設に必要な現場の技能人材は事故前と比べて約3割、原子力教育や研究を担う教員も約2割減った。「依存度低減」の影響がこうした形で表れていると言えよう。今回の目標設定を人材確保に結び付ける必要がある。
政府は安全性や発電効率が高い次世代革新炉の開発・設置にも取り組む方針だ。特に既存の原子炉を改良して安全性を高めた「革新軽水炉」は、技術の成熟度が高く、建て替えの有力な候補と言える。原子力規制委員会は革新軽水炉を念頭に、建て替える場合も現行の新規制基準で安全審査を行うとしている。
政府は問題解決主導せよ
建て替えには地元の理解を得ることも求められる。住民の不安を払拭するには、安全確保と共に使用済み燃料を再利用する「核燃料サイクル」の確立が欠かせない。使用済み燃料の再処理工場が完成延期を繰り返し、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地がいまだに決まっていないことも、原発への不信感を高めている一要因である。政府はこうした問題の解決を主導すべきだ。






