世界保健機関(WHO)は5月、アフリカ中部のコンゴ(旧ザイール)と隣国ウガンダでエボラ出血熱の感染が拡大しているとして「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。
エボラ熱は致死率が高く、2014~16年に西アフリカで流行した際には1万人以上が死亡した。国際協力による対処を急ぐ必要がある。
コンゴやウガンダで流行
コンゴでは、国内の感染確認者数が計344人に達し、このうち60人が死亡した。ウガンダでは感染者が15人、死者は1人だ。コンゴはウガンダのほか、アンゴラやタンザニアなど9カ国に囲まれており、コンゴはもちろん周辺諸国での感染拡大が憂慮される。
エボラ熱を引き起こすウイルスは、コウモリの一種が宿主とされる。感染すると発熱や出血などの症状に見舞われ、致死率が高い。感染した動物や人の血液、体液との接触で拡大し、日本では感染症法で最も危険度が高い「1類」に属する。
今回の流行では、エボラ熱のうち治療法が確立されていない「ブンディブギョ株」が検出された。致死率は25~40%と推定されているが、ワクチンの開発には少なくとも半年はかかる見通しだ。国立健康危機管理研究機構は、感染が広がっている地域と日本との間では人の往来が限定的なため、「日本の一般市民が感染する確率は低い」としている。
しかし、危険な感染症の拡大を人ごとのように考えるわけにはいかない。国際社会は協力して感染を封じ込めるべきだ。日本は14~16年の流行時に資金や物資、食料の援助、専門家の派遣などを行った。今回も積極的な支援に努めてほしい。
ただ懸念されるのは、流行地域で政府軍と反政府勢力の紛争に伴う政情不安が続いていることだ。WHOの支援活動が困難を極めているだけでなく、治安が悪いため人々が頻繁に移動することで感染拡大を招いているとの指摘も出ている。国際社会には情勢への関与を強めることが求められる。
政府は昨年1月、長崎大高度感染症研究センターの実験施設をエボラ熱など危険度の高い病原体を扱える施設「BSL4」に指定した。BSL4は危険な感染症のほかバイオテロにも対応するため、先進国を中心に整備され、東アジアでは中国や韓国、台湾で既に稼働している。
BSL4で研究進めよ
日本には東京都武蔵村山市の国立感染症研究所村山庁舎にもBSL4があるが、患者の診断や治療しかできない。予防法や治療法を開発するための研究ができるBSL4は長崎大の施設が初めてとなる。政府は16年、BSL4整備による感染症研究力の向上を国策と位置付けた。稼働が本格化して研究が進めば、エボラ熱のような危険な感染症が海外で蔓延(まんえん)した場合、支援を一層充実させることができるだろう。
ただ致死率の高いウイルスを扱うため、周辺住民の不安は根強い。長崎大は安全対策を万全にするとともに住民との定期的な協議の中で不安解消を図る必要がある。






