
シンガポールで開催されたアジア安全保障会議では、中国の増大する軍事的脅威に対し周辺国がいかなる連携によって均衡を保ち得るか討議され、各国は米国から一層の防衛負担を求められた。小泉進次郎防衛相は装備協力で新たな役割を担うことを表明し、インド太平洋地域の安定におけるわが国の存在感が増している。
豪比と防衛装備協力
強大化する中国に対し前方展開戦略を取る米国の力が衰退傾向にあり、中国の海洋進出は漸進している。これを抑止するのは「背負い切れない重荷」とヘグセス米国防長官は演説で表明し、経済成長を果たしている同盟国の防衛を肩代わりする時代は終わったと述べた。
米国が中国を抑止するのは限界に来ていると率直に認め、同盟国には米国への依存をたしなめて防衛努力を促す姿勢は、世界のパワーバランスが地政学的変化をもたらしていく現実のプロセスを反映している。米国が南北米大陸の位置する西半球中心の安保政策を採用し、これを不安視するアジア諸国もある。
ヘグセス氏に小泉氏は異例の閣僚による質問を行い、米国の関与政策を確認した。ヘグセス氏は、米国の国家防衛戦略の柱の一つはインド太平洋地域における中国の抑止であると強調。小泉氏は質問の中で日本が防衛装備品の輸出緩和によりフィリピンやオーストラリアなどに協力していることを強調した。
この質疑は国際舞台でのデモンストレーションと言えるが、日本が護衛艦や潜水艦など武器を有する装備の輸出が可能になり、インド太平洋諸国が関心を寄せていることは事実だ。
それだけ中国の軍事的圧力を差し迫った脅威と認識する国が増えている。中国は大量の漁船団、海警局艦船を海洋進出の先兵としており、備える船がなければ簡単に入ってくる。軍事的に装備がおぼつかない国にとって、日本の退役艦艇も有効とされている。
小泉氏の5月連休中のインドネシア訪問、アジア安保会議の直前に訪日したフィリピンのマルコス大統領と高市早苗首相との会談などで具体的な防衛装備の協力が話し合われた。また会議に合わせて日本、豪州、ニュージーランドの3カ国防衛相会談が開かれ、海上自衛隊の護衛艦「もがみ型」能力向上型のニュージーランドへの輸出に向けた連携が確認された。わが国は地域の安全保障に対する積極的な貢献へと舵(かじ)を切りつつあり、会議はそのお披露目の場となった。
中国の批判にひるむな
一方、2年連続して董軍国防相の派遣を見送った中国は「新型軍国主義」との批判で日本を狙い撃ちしている。会議で演説した小泉氏は、核兵器や戦略爆撃機を大量に保有する中国が、いずれも持たない日本をそのように批判することを「おかしいと思わないか」と指摘した。
昨年の高市氏の台湾を巡る存立危機事態国会答弁に中国は激しく反応し、会議でも日本を批判のターゲットとした。しかし、これは対中抑止の重要なポイントに日本がなってきたからだ。わが国は防衛費増額、防衛装備協力などをひるむことなく実行に移していくべきだ。





