高市早苗首相は国賓として来日したフィリピンのマルコス大統領と会談した。両首脳は高まる中国の脅威を念頭に、東・南シナ海の情勢に深刻な懸念を表明するとともに、現状を力や威圧で変更しようとするあらゆる一方的な試みに対して強く反対することを改めて確認した。

機密情報共有へ交渉開始
そして日本とフィリピンの連携強化は、進化した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現にとって極めて重要だとして、両国の関係を「包括的・戦略的パートナーシップ」に格上げし、安全保障面での関係を強化することで合意した。
具体的には、安全保障に関する機密情報を共有するための軍事情報包括保護協定(GSOMIA)締結に向けた交渉を開始することで合意。また防衛装備品の輸出に制約を課す「5類型」撤廃を踏まえ、海上自衛隊の「あぶくま型」護衛艦などの輸出に向け、防衛当局間の協議を加速させることで一致した。
経済安全保障分野では、先に高市首相が表明したエネルギー協力の枠組み「パワー・アジア」による金融支援などを通じ、日本がフィリピンの国家石油備蓄制度の発展や東南アジア諸国連合(ASEAN)の共同石油備蓄への支援を提供すること、石油由来の医療関連物資に関するサプライチェーン(供給網)強化などが確認された。
わが国はこれまで自衛隊とフィリピン軍の共同訓練をはじめ、2023年度から始まった「政府安全保障能力強化支援(OSA)」の枠組みを毎年フィリピンに適用し、沿岸監視レーダーの提供などを通してフィリピン軍の能力向上に協力してきた。また殺傷能力のある武器の輸出も可能となり、マルコス氏は両国関係が「新たな段階に入った」と日比の安保協力進展を高く評価している。
シーレーン(海上交通路)の要衝に位置するフィリピンは、日本にとって極めて重要な国だ。南シナ海での領有権を巡る対立で、フィリピンは中国の恫喝(どうかつ)や暴力にさらされている。インド太平洋地域の安全と法の支配を維持するとともに、西太平洋への進出をもくろむ中国の動きを阻止するためにも、フィリピンとの安全保障協力が急がれる。
自衛隊は今年4~5月、米比両軍が実施する合同軍事演習「バリカタン」に初めて本格的に参加し、米比両軍と実動訓練などを実施した。フィリピンと米国の間にはGSOMIAが結ばれており、日比でGSOMIAが締結されれば、日米比3国間での高度な情報の共有も可能になり、中国に対する監視態勢の強化につながる。圧倒的に強大な中国軍を抑止するためには、日比2国間の安保協力にとどまらず、日米比3国の戦略的な連携も進めていく必要がある。
中国との対話の努力を
ただし対中抑止力の強化と並行して、対話の窓口を開く努力も忘れてはならない。フィリピンも中国との意思疎通のためのルートは維持している。日中関係が悪化する中、日本には中国とのパイプ役が不在だ。そうした厳しい状況だからこそ、中国との対話の糸口をつかむため、トップである高市首相の強いイニシアチブが求められる。





