
政府のインテリジェンス(情報収集・分析)能力の強化を目指す「国家情報会議」設置法が成立した。国民の安全を図り国益を守る上で不可欠な体制づくりである。今後は、対外情報庁(仮称)の創設やスパイ防止関連の法制といった具体的な情報保全、積極的な情報発信への取り組みが求められる。「情報戦」に備えるための総力を高めていくべきだ。
重要性増す安保の枠組み
情報会議は首相が議長を務め官房長官など関連省庁大臣で構成。安全保障やテロリズムに関する「重要情報活動」、外国スパイによる影響工作など「外国情報活動」について調査し、対処の基本方針を決定する。「縦割り行政」の弊害が情報活動においてもよく指摘されていたが、今後は情報会議に情報が集約され、司令塔機能が強化される。
会議の事務局として内閣情報調査室を改組した「国家情報局」を設置。トップは内閣情報官を格上げした「国家情報局長」とし、国家安全保障局長と同格にするという。情報と戦略・施策は両輪であり、その重要性からも当然と言える。その意味で、こうした体制づくりは同盟国・同志国からも歓迎されよう。
高市早苗首相は、かねて経済安全保障担当相としての経験を踏まえ「国家情報局」構想を訴えていた。国家の存亡を左右するインテリジェンスで情報収集と保全は一体だ。一国での国家防衛は困難な現在の国際状況下で同盟国・同志国との連携の重要性が増している。日本と米国、オーストラリア、インドの「クアッド」が形成する安全保障・経済協力の枠組みなどだ。
だが、米国、英国、カナダ、豪州、ニュージーランドのUKUSA協定に基づく機密情報共有の枠組み「ファイブアイズ」への日本の正式加入には情報保全体制が課題となっている。日米同盟に加え、こうした国々との重層的な連携がますます重視されていることが、一連の安全保障施策の背景にある。
国家情報会議には反対野党のいう「チェック体制」が必要である。しかしそれは「監視強化」や、付帯決議にもあった「プライバシーへの配慮」という観点に基づくものではない。重要なのは同会議の運用が有効かつ適正に行われていくかである。
時の政権が恣意(しい)的に運用することがあってはならない。民主国家である以上、政権交代もあり得るからだ。時の首相が誰であろうと、情報収集・防諜(ぼうちょう)体制は必要な国家機関なのだ。問題はインテリジェンスの扱い、運用が国益に沿った厳格な形でなされているかどうかである。
情報監視大国の中国は共産党一党独裁体制である。中国のいう「国益」はすなわち「党益」であり、国民を支配下に置くための「情報統制」と言えよう。一部野党の反対論はこれを民主国家日本と同列視したもので、まさに世論のミスリードを狙ったものだろう。
与党の覚悟が問われる
次なるステップは、対外情報庁の創設である。そして「本丸」ともいうべきスパイ防止関連法制と続く。国家情報会議は緒に就いたばかりだ。今後与党がインテリジェンス体制の構築をどう進めるか覚悟が問われる。





