トップオピニオン社説補正予算編成 中東危機に不断の備え必要

補正予算編成 中東危機に不断の備え必要

 高市早苗首相が2026年度補正予算案を編成し、国会に提出することを表明した。今年度予算が4月に成立したばかりで、5月中に補正予算を組むのは極めて異例である。

 しかし、米国・イスラエルとイランとの軍事衝突が長期化し、原油・天然ガス価格が急騰する中で、物価高騰が家計と企業活動に深刻な影響を及ぼしつつある。夏の電力需要のピークを前に、政府が早期の追加対策を打ち出す判断は妥当と言える。

揺らぐ今年度予算の前提

 首相は補正予算を6月中旬にフランス東部エビアンで行われる先進7カ国首脳会議(G7サミット)前に成立させる方針だ。政府は7~9月の電気・ガス料金の負担軽減効果を標準的な家庭で約5000円と見込む。前年の約3000円を上回る規模で、エネルギー価格の上昇圧力がそれだけ強まっていることを示している。

 イラン情勢の緊迫化は、高市内閣にとって財政運営上の大きな試練である。補正予算の規模は3兆円程度と抑制的だが、赤字国債の追加発行は避けられない。とはいえ、原油・天然ガスの価格高騰は製造業から物流、農水産業まで幅広い分野に波及し、家計の負担増も免れない。景気下支えと国民生活の安定のため、国会で速やかに審議し、成立させる必要がある。

 今年度予算は過去最大規模となったが、政府は財政規律への配慮を強調し、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を達成したと説明してきた。エネルギー安全保障などへの「先手の投資」と位置付けたが、2月末の米国・イスラエルによるイラン攻撃から始まった今回の中東危機はその前提を揺るがしている。

 折からのガソリン価格の上昇に対しては、昨年の臨時国会でガソリン暫定税率の廃止を盛り込んだ補正予算を成立させた。さらに、ガソリン補助金の原資となる基金に対し、3月に昨年度予算の予備費から約8000億円を追加した。さらに今夏の電気・ガス料金を補助するために、今年度予算の予備費から約5000億円を支出することを閣議決定した。政府は段階的に負担軽減策を積み増している。

 しかし、国際情勢は政府の想定を上回るスピードで悪化している。イラン攻撃についてトランプ米大統領は当初「短期間で収束する」と発言していたが、イラン側は原油・天然ガス輸送の要衝であるホルムズ海峡を事実上封鎖する対抗措置を取った。わが国が輸入する原油の約9割が通過する海域の緊張は、供給不安を高めている。

原油高リスクに対処を

 国際原油価格(ブレント原油)は昨年12月には1バレル60㌦前後だったが、今年に入りトランプ氏がイラン攻撃を示唆すると70㌦近辺まで上昇。2月末の攻撃開始後は急騰し、100㌦を突破した。エネルギー価格の高騰は日本経済にとって最大の外部リスクであり、政府は迅速に対応していると言えるが、補正予算案編成で中東情勢対応予備費を創設する方針を示したように、さらなる備えが不可欠だ。

 危機の深刻さを踏まえ、政治は迅速かつ実効性のある対応を示すべきだ。

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »