栃木県上三川町(かみのかわまち)の民家で親子3人が死傷した事件で、指示役の夫婦と実行役である16歳の少年4人が強盗殺人容疑で逮捕された。
殺害された69歳女性には20カ所以上の刺し傷があり、40代の長男と30代の次男もバールで襲われた。匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)による冷酷で凶悪な犯罪は断じて容認できない。
周辺に不審車両や人物
現場周辺では4月中旬から不審車両や人物がたびたび目撃されていた。事件当日、実行役の少年とみられる目出し帽姿の人物と遭遇した近隣住民もいたという。事件前に次男宅が空き巣被害に遭い、女性の自宅住所が記された書類などが盗まれていたことも明らかになった。
県警がパトロールを強化していたにもかかわらず、白昼の事件発生を許したことは極めて遺憾だ。県警はなぜ防止できなかったのかを徹底検証しなければならない。
実行役の少年の一部は、指示役夫婦から「『やらなければ家族や友人を殺す』と脅された」と供述している。トクリュウの典型的な手口だ。強盗に入った際、スマートフォンのアプリを使い、夫婦からリアルタイムで指示を受けていたことも判明した。県警は少年の1人がトクリュウの上役を通じてリクルートされ、夫婦に引き合わされたとみて調べている。上役がいるのであれば摘発を急ぐ必要がある。
トクリュウによる凶悪事件では、東京都狛江市で2023年1月、90歳女性が殺害された事件が記憶に新しい。犯行は、フィリピンが拠点の「ルフィ」と名乗る指示役らが実行役らと共謀したもので、女性は両手を結束バンドで縛られ、バールで殴られて死亡した。犯行の残忍さは今回の事件とも共通していると言えよう。
トクリュウに絡み、全国の警察が25年に検挙した人員は1万2178人に上った。このうち20代が37・8%、10代が11・4%を占めている。ただ今回の実行役が全員16歳だったことを見ても、一層の低年齢化が進んでいる恐れがある。
警察庁は「暴力団員がトクリュウを配下に置き、犯罪を多様化させているほか、逆に暴力団の威力や人脈を利用して資金を得るグループもある」と分析した。暴力団の高齢化と弱体化が進む中、トクリュウを利用して資金を稼ぐ構図が浮かぶ。
また海外を拠点にした特殊詐欺では暴力団や海外犯罪組織の関与も確認されたとし、トクリュウが海外組織と暴力団のつながりに重要な役割を果たしているとした。暴力団がトクリュウを通じて一般市民の安全や生活を脅かしているのであれば看過できない。
警察は管轄超えた協力を
今回の事件を巡っては、警察庁が警察法に基づき、警視庁などに捜査に加わるよう指示を出した。東京都内など栃木県外の事件との関連が浮かび上がってきたためだ。
広域組織犯罪に対処する必要がある場合、警察庁長官は管轄権のない都道府県警に必要な捜査態勢を指示できる。管轄を超えた協力で実態解明を急ぎ、全面解決を図ってほしい。





