トップオピニオン社説日韓首脳会談 有意義なシャトル外交定着【社説】

日韓首脳会談 有意義なシャトル外交定着【社説】

会談前に握手する高市早苗首相(左)と韓国の李在明大統領=19日午後、韓国・安東(時事)
会談前に握手する高市早苗首相(左)と韓国の李在明大統領=19日午後、韓国・安東(時事)

 高市早苗首相と韓国の李在明大統領が韓国・安東市で首脳会談を行った。1月に高市氏の出身地の奈良で会談したのに続き、今回は李氏の故郷で行われたもので、首脳同士のシャトル外交の定着は日韓両国の信頼関係構築と日米韓を軸とする地域の安定に資するものだ。

 尹前大統領の時に再開

 両首脳の共同記者発表で李氏は「7カ月間で4回会談を行ったことは、シャトル外交が完全に定着したことを意味する。今後も未来志向の協力を拡大していくことを期待する」と述べ、今後の協力関係の推進を表明した。高市氏は「互いのふるさとでシャトル外交を間を置かずに実施でき、友情と信頼関係が強まった」と応じた。

 日韓シャトル外交は中断の経緯がある。2004年の小泉純一郎・盧武鉉両首脳で始まったが、11年の野田佳彦・李明博両首脳でいったん途切れた。歴史問題が両国の内政事情に絡み、関係が冷え込んだためだが、再開したのは保守の尹錫悦前大統領が対日重視外交を打ち出した23年。尹氏失脚を受けて大統領に就任した李在明氏も継続している。同外交は両国関係のバロメーターと言えよう。

 両国友好の願いを込めて李氏は高市氏に地元伝統の仮面舞踊(タルチュム)で用いる仮面9種類を贈った。さまざまな社会階層や職業をユーモラスにかたどった仮面は多様性の意味を持つといい、これらが舞踊劇で和合して伝統芸能となる。今日では国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産になっている。日韓の和合が長く続くことを願いたい。

 歴史問題の深い溝、民族性の違いを抱えながらも、両国は最も近い隣国同士であり、国民の往来も増えている。しかし、一つ歯車が狂えば李氏の政治の師である文在寅元大統領の執政当時に「積弊清算」という一大反日キャンペーンが起き、海上自衛隊機に対するレーダー照射事件など安全保障上の緊張、ひいては経済協力関係の後退を招いたことは記憶に新しい。

 ただ当時と大きく変化した点は、北朝鮮の主体思想と体制を崇拝し、民族の「平和統一」を標榜(ひょうぼう)した韓国の従北左翼勢力が、ほかならぬ北朝鮮によって拒絶されたことだ。金正恩朝鮮労働党総書記は「韓国は最も敵対的な国」と公認し、憲法からも「平和統一」「民族大団結の原則で祖国統一を実現するために闘争する」などの文言が削除された。

 核兵器保有を宣言し、ロシアのウクライナ軍事侵攻に加勢して対露関係を強化するなど北朝鮮の軍事的脅威が高まったことは、もともと反日言動を繰り返してきた政治家だった李氏をして現実主義に外交の舵(かじ)を切らせたと言える。

 協力具体化の実績重ねよ

 首脳会談では日韓・日米韓協力を強化する重要性を再認識するとともに、インド太平洋の安定の要となるパートナーとしての役割が確認された。中東情勢の混乱長期化をにらみ、原油の備蓄強化や相互融通などエネルギー安全保障協力の検討でも一致した。

 具体化の実績を一つ、また一つと積み上げながらシャトル外交を継続してほしい。

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