「性的少数者」を巡る問題で司法による憂うべき判断がまた下った。性自認が男女どちらでもない「ノンバイナリー」の申し立てを受けた家事審判の抗告審で、大阪高裁が男女以外の記載を認めない戸籍法の運用は憲法やLGBT理解増進法の理念に反する、としたのだ。
表記見直しの検討促す
「同性婚」を認めない現行制度を「違憲」とする判断が次々と下されることに象徴される、リベラル思想の司法への浸透がここでも表れた形だ。社会秩序の根幹に関わる性別や性関係を相対化させる司法判断が続くようでは日本の将来を憂えざるを得ない。
50代の申立人は戸籍上、父母との続き柄欄は「長女」となっている。現行制度では、出生届の男女別に基づき続き柄が記載される。申立人は小学生の頃から自身が女性であることに違和感を持ち、男性とも自認できないでいるため、「子」や「第2子」など性別を表記しない記載に訂正することを求めている。一審の京都家裁は申し立てを却下したため、即時抗告していた。
大阪高裁の裁判長は、戸籍は「社会の基本的なインフラで当該事案限りの処理には親しまない」と述べ、一審に続き記載変更の求めは退けた。一方、性自認は「重要な法的利益」であり、戸籍に男女以外の表示方法を認めない現状は、法の下の平等原則を定めた憲法14条1項の趣旨に抵触すると述べた。また、令和5年6月に施行されたLGBT理解増進法の基本理念にも反するとし、男女の二元的な性別表記の在り方の見直しを検討し、国会の立法を通じて制度を整備すべきだと指摘した。
自分を男女どちらにも当てはまらないと感じる人が存在するのは確かである。だからと言って、戸籍上の性別表記を見直すべきだとするのは論理の飛躍である。現行の戸籍法の運用が憲法の趣旨に抵触するとは、主観的な拡大解釈だと言わざるを得ない。背景にはリベラル思想があるのだろう。申立人のケースは例外的であって、ノンバイナリーの法的承認につながる対応を避けることが肝要である。
また、LGBT理解増進法の基本理念にも反するとしたことは、同法の見直しの必要性を示している。わが国の法律は同法施行まで性的指向や性自認の概念を持たなかった。自己の性別の主観的認識を意味する性自認を盛り込むことは男女の性秩序を混乱させるとして反対意見が強かったため、同法は「ジェンダーアイデンティティ」という言葉を使っている。だが、この二つは実質同じ概念であり、さまざまな問題を惹起(じゃっき)させている。
男女の概念を崩すな
例えば生物学的には男性でも「女性」を自認するような「トランスジェンダー」が障害でなく人の「属性」と捉えられるようになり、トイレ使用などに混乱をもたらしている。ノンバイナリーの法的承認によって、社会がさらに混乱することは避けられない。同法の付則は施行後3年をめどに、施行状況を検討し「必要な措置」を講じることを規定している。例外的な事例によって、男女という基本的な性別概念を崩さないための見直しが必要である。





