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iPS保険適用 安全確保に細心の注意を【社説】

住友ファーマが培養した人工多能性幹細胞(iPS細胞)(同社提供)
住友ファーマが培養した人工多能性幹細胞(iPS細胞)(同社提供)

 中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関)が、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った再生医療製品で、パーキンソン病の治療に用いる「アムシェプリ」の公的医療保険適用を20日付で承認した。

 iPS製品の保険適用は初めてで、患者にとっては朗報だ。医療現場での使用が始まる意義は大きい。

 パーキンソン病の治療に

 パーキンソン病は、運動に関わる神経伝達物質ドーパミンを産生する神経細胞が減少し、手足の震えなどの症状が出る。国内の患者は約25万人とされ、現在は主にドーパミンを補充する薬物療法が行われている。住友ファーマのアムシェプリは、iPS細胞から作った神経細胞で、脳内に移植して運動機能の改善を図るものだ。これまでの治療薬では効果が不十分だった人が対象となる。

 厚労省が3月、大阪大発のベンチャー企業「クオリプス」による心臓病患者向けの「リハート」と共に、世界初のiPS細胞を使った再生医療製品として条件・期限付きで製造・販売を承認した。リハートについても、公的保険適用が今夏にも決定する見通しだ。

 アムシェプリは、京都大付属病院などが2018~23年、50~60代の患者で治験を実施。500万~1000万個を脳に移植し、2年間経過を観察したところ、患者6人中4人で運動機能の改善が確認され、重篤な副作用もなかった。

 移植した細胞からドーパミンが出ていることも確認された。1回の治療によって効果が長く続くとみられている。ただ、実際に効果があったのは65歳以下の患者だけだった。厚労省の指針では70歳以上への投与について慎重な対応を求めている。このため、恩恵が及ぶのは患者の一部だろう。

 京都大の山中伸弥教授が生み出したiPS細胞は、さまざまな組織や臓器の細胞に変えられる万能細胞だ。パーキンソン病などのほか、目の病気や脊髄損傷、血液の難病の治療に向けた研究も進んでいる。患者の期待は大きい。

 ただ増殖能力が高いため、目的の細胞以外の細胞を体内に移植した場合、腫瘍化する恐れがある。住友ファーマなどは、培養する中で目的の細胞になったかどうかを確かめられる機器を開発し、目的以外の細胞を取り除いてアムシェプリの安全性を確保しているが、治療には細心の注意が求められよう。

 現在、アムシェプリの承認は33年までの期限付きだ。厚労省は今後、7年をかけて治療データを追加収集し、本承認の可否を改めて審査する。他のiPS製品も一日も早い実用化が望まれる。

 製造コストの削減を

 アムシェプリの国内の薬価(公定価格)は約5500万円に決まった。自己負担に上限を設ける高額療養費制度が適用されるため、患者が支払う医療費は最大で数十万円と大幅に抑えられる。

 しかし、保険組合や国の負担は非常に大きい。住友ファーマは安全確保を万全にした上で製造コストの削減も進めてもらいたい。

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