JR北海道は単独で維持することが難しい赤字の8線区について、鉄道運行をJR北、線路など施設の保有・管理を自治体が行う「上下分離方式」を柱とした改善策を提案する意向だ。自治体の財政も厳しい中、重要路線に関しては国の支援強化も求められよう。
JR北が改善策策定へ
JR北は2016年、単独で維持が困難な赤字13線区を公表し、このうち留萌(るもい)線(深川―石狩沼田間)など5線区は今年4月までに廃止された。宗谷線(名寄(なよろ)―稚内(わっかない)間)など残る8線区の営業距離はJR北全体の4割を占め、赤字額の合計は24年度で約148億円に達する。政府は8線区の抜本的な改善策を26年度末までに策定するようJR北に求めており、JR北は各線区で自治体との協議を進めて9月末の中間取りまとめを目指すとしている。
国土交通省によると、上下分離方式は全国で28の鉄道事業者が採用している。多くは利用者減少で経営が悪化した路線だ。24年度に導入した近江鉄道(滋賀県彦根市)の鉄道事業が、31年ぶりに営業黒字となった例もある。欧州では、国や州政府が鉄道インフラの維持に責任を持つケースが一般的だ。ただ北海道では自治体の財政事情も厳しく、負担増となることへの警戒感は強い。
1960年代以降のモータリゼーションによって、旧国鉄は東海道新幹線が開通した64年から慢性的な赤字体質に陥った。人件費が膨らむ一方、運賃の値上げはままならず、収支悪化に拍車が掛かった。左派労働組合を弱体化させる狙いもあって国鉄は87年に解体され、JR各社に引き継がれた。
ローカル線の赤字問題はJR北だけの話ではない。しかし、JR各社の間では経営格差が拡大している。JR旅客6社のうち東日本、東海、西日本、九州は株式上場したが、北と四国は国側の支援が続いている。自民党内からは、鉄道網維持のために必要な対応ができなければ、再国有化や持ち株会社化を議論すべきだとの意見も出ている。
鉄道は重要インフラの一つであり、収益性のみを基準に存廃を決めることには疑問が残る。ロシアに侵略されているウクライナは、北大西洋条約機構(NATO)加盟国から供与される戦車や地対空ミサイルを鉄道で輸送している。北海道には陸上自衛隊の弾薬の多くが保管され、有事の際には北海道の部隊から戦車や弾薬を前線に運ぶために貨物鉄道が必要だとも指摘されている。
太平洋戦争中、鉄道は全国各地に兵員や軍需物資を運ぶ上で最も重要な役割を果たした。戦争中に開通した関門鉄道トンネルは、船舶不足に陥る中、九州・本州間の石炭、物資、兵器の輸送ルートとなった。ローカル線の存廃を巡る議論では、安全保障との関わりも大きなテーマだと言えよう。
新時代への対応示せ
また鉄道の二酸化炭素(CO2)排出量はトラックなどよりも少ないため、地球温暖化対策の観点からも見直されている。
人口減が進む中、国は新しい時代に対応した鉄道の在り方を示す必要がある。





