
高市早苗首相がベトナムとオーストラリアを訪問し、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の進化に向けた連携を進めるとともに、エネルギーの安定供給やサプライチェーン(供給網)の強靭(きょうじん)化について協力を確認した。緊迫化する中東情勢を踏まえ両国との関係を強化する必要がある。
FOIPの進化打ち出す
最初の訪問国であるベトナムではレ・ミン・フン首相と会談し、原油やレアアース(希土類)などの重要鉱物の確保に向けた協力で合意。また宇宙や通信、人工知能(AI)、半導体など科学技術での協力や、「政府安全保障能力強化支援(OSA)」の具体策について調整を進めていくことでも一致した。
さらに高市首相は現地の大学での講演で、FOIPの提唱から10年になり、各国を取り巻く環境は大きく変わったと指摘。揺らぐ「法の支配」を維持するため、経済安全保障を軸に同志国との実務的な協力枠組みに重点を置いたものへとFOIPを進化させる構想を打ち出した。
次に訪れた豪州ではアルバニージー首相と会談し、重要鉱物やエネルギーの確保、防衛協力などでの関係強化を確認。経済安全保障に関する共同宣言も発表した。安倍晋三元首相が2016年にケニアのナイロビで提唱したFOIPは、日米豪印の戦略的連携を目指す「セキュリティダイヤモンド構想」を発展させたものであった。また、日豪は共にクアッド(日米豪印戦略対話)の構成国でもある。
さらに、海上自衛隊の最新鋭護衛艦「FFM」(もがみ型)能力向上型をベースに豪海軍新型艦の共同開発を進めることで合意するなど日豪の関係は非常に緊密で、日本は豪州を「準同盟国」と位置付けている。今回の合意で準同盟国としての連携はさらに強まり、豪州訪問の意義は大きいものがあった。
一方、ベトナムは主要各国と全方位外交を展開。その巧みな交渉力は「竹外交」とも称される。竹のごとく柔軟にしなる外交という意だが、敵味方と単純視せず、案件や課題ごとに各国それぞれと実利的な関係を築くことに長(た)けた国である。
例えば、南シナ海の領有権問題で鋭く対立しながら、ベトナムが一番重要視するのが中国であり、経済を中心につながりは強い。他方、ベトナム戦争を戦った米国とも経済協力を進め、ロシアとの関係も良好だ。米露との連携を深め中国を牽制(けんせい)しているのだ。かようにしたたかでバランスに配慮した外交を取るベトナム故、経済などの協力進展は期待できても、進化したFOIPを共有する国と位置付けるのは慎重であるべきだろう。
幅広い支持得られるか
また進化したFOIPで強調された経済安全保障での連携対処は、確かに経済的脅威に脆弱(ぜいじゃく)な日本の立場からは重要なテーマだが、「共に、強く豊かに」と説くものの、経済的な実利の追求に傾き、従来のFOIPほどの理念の崇高さや普遍性は読み取れない。当面の経済問題への対処策とはなっても、果たして各国から幅広い支持が得られるか、長きにわたり日本外交の基本柱となり得るものか、注視しつつ見守りたい。





