トップオピニオン社説市販薬「過剰摂取」 法改正機に防止教育徹底を【社説】

市販薬「過剰摂取」 法改正機に防止教育徹底を【社説】

 せき止めなどの市販薬販売に制限を設ける改正法が5月から施行されている。過剰摂取(オーバードーズ)が若者を中心に深刻化しているからだ。改正法の施行を機に、学校などでの薬物乱用防止教育を強化しオーバードーズの危険性を教え、若者の心と体を守る必要がある。

 違法薬物への入り口にも

 改正されたのは医薬品医療機器法。風邪薬や解熱鎮痛剤、アレルギー薬などの18歳未満への販売を1箱に限定するものだ。薬剤師らは身分証などで年齢、氏名、他店での購入歴を確認し、過剰摂取に関する情報を提供することになった。成人は複数箱入手できるが、理由によっては販売を断ることもできる。規制を順守しない店舗は営業許可が更新されない可能性がある。

 規制強化の背景には、心の不調を訴える若者が増えるに伴い、薬を本来の用途でなく、感覚や気持ちを変える目的で大量に服用するオーバードーズが広がる危機的状況がある。ドラッグストアなどで購入できる市販薬が用いられることが多い。

 国立精神・神経医療研究センターが高校生約5万人から回答を得た調査(2024年度)では、約70人に1人が「過去1年間に市販薬の乱用経験がある」と答えている。オーバードーズは低年齢化し小学生にも広がる傾向にある。この状況を改善するには、販売する側が改正法を順守することはもちろん、心の不調を訴える若者に周囲の人が注意を怠らないことも大切だ。

 市販薬の過剰摂取を軽く考えてはいけない。精神的・身体的に非常に危険な行為である。意識障害や不整脈、肝障害などを引き起こすだけでなく、急性の中毒症状で命に関わる事態を招いたり、自殺に用いられたりすることもある。

 違法薬物への入り口(ゲートウエードラッグ)になることも忘れてはならない。すぐに耐性ができることで市販薬の量を増やすか、より強力な効果を求めて大麻や覚醒剤などの違法薬物に手を出すことが少なくないのである。

 販売規制以外に、学校が乱用防止教育に積極的に取り組むことも必要だ。違法薬物に関する知識だけでなく処方薬、市販薬にも依存性や副作用があることなどを、まず教師が学び、児童生徒に正しい知識を伝えることが求められる。

 家庭の常備薬が用いられ、薬やその情報がインターネットで入手できることもオーバードーズ拡大につながっていることから、保護者が子供のネット使用に注意を怠らないことの重要性を指摘しておきたい。家族・友人関係、学校・仕事上のトラブルがきっかけで市販薬の乱用を始めるケースが多いことが分かっている。親子のコミュニケーションが十分か、各家庭でチェックしてほしい。

 唯物的な精神医療見直せ

 心の不調をすぐに薬で解決しようとする社会の風潮もオーバードーズを煽(あお)っているのではないか。そこには精神医学の問題が潜んでいる。人の心を唯物的に捉えることで、向精神薬を安易に処方する医療の現実がある。薬物乱用防止のためにも、改正法施行を唯物的な精神医療を見直す契機とすべきだろう。

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