トップオピニオン社説米大統領襲撃 警備は徹底されているか【社説】

米大統領襲撃 警備は徹底されているか【社説】

25日、米ワシントン市内での夕食会中、銃声らしき音が聞こえ銃を抜く治安要員(AFP時事)
25日、米ワシントン市内での夕食会中、銃声らしき音が聞こえ銃を抜く治安要員(AFP時事)

 トランプ米大統領が出席したホワイトハウス記者会の夕食会で発砲事件が起こり、容疑者が拘束された。トランプ氏以下参加した政権幹部、記者らにケガはなかったが、2年前の大統領選挙中の銃撃を想起させる悪夢であり、事件を生んだ背景や原因についての徹底した解明と保安体制の抜本的な見直しが迫られよう。

 大学界の思想的土壌も

 当局によると、容疑者はカリフォルニア州出身の30代の男で、ショットガン、拳銃、ナイフを所持していた。会場の警備区域を突破しようとした際、シークレットサービスの職員に向けて発砲した。職員は防弾装備により重傷を免れたという。

 不思議なのは、容疑者が宿泊客だったとしてもホテル内の会場に接近して侵入を許す警備体制のあり方だ。

 トランプ氏は事件後、ホワイトハウスでの記者会見で容疑者は単独犯との見方を示した。容疑者はトランプ氏を標的としていた可能性が高く、襲撃事件は今回が3回目だ。

 もちろん、現場での迅速な対応がなければ大惨事になっていただろう。その点は最悪を免れたが、ホテルなど一般の会場を舞台とした事前の危機管理や体制に問題はなかったのか。

 事件はイラン攻撃が長期化している中で起きた。さらに第2次トランプ政権発足後における、時にトランプ氏の強硬な政策や言動に対する不満や反発とも無関係ではあるまい。容疑者は全米屈指の名門校を卒業した「超エリート」で、これまで「反トランプ」デモにも何度も参加していた。

 トランプ氏といえば、ハーバード大学に対する補助金停止など厳しい対応が記憶に新しい。同大学に限らず名門大学が民主党の“牙城”と化している状況に対し、大学における「政治的中立性」の確保は深刻な課題ともなっている。

 単独犯であっても、そうした事件を起こさせた動機などの調査が不可欠だ。トランプ氏が「(容疑者は)キリスト教徒への憎悪を表明したマニフェストを書いていた」と主張したのも、そうした容疑者の思想的な背景に言及したものだろう。

 事件に対する、特にリベラルメディアの反応は冷めている。米紙ニューヨーク・タイムズはSNSなどで沸騰している「トランプ政権が支持率低下やイラン問題などから大衆の関心をそらすため」といった根拠のない推論や陰謀論を批判的に紹介する形を取りながらも、一方でトランプ氏がSNSを通じて積極的に発信する点で陰謀論を煽(あお)っているとして政権批判もにじませている。

 改めてテロへの非難を

 トランプ氏は相次ぐ自らへのテロ未遂事件に対し「大きな影響力を持つ人は狙われるものだ」と述べる一方、言論の自由を重視する記者会の夕食会で事件を起こした容疑者を「米国憲法を攻撃した悪党だ」と非難した。

 「国論を二分する」政策を断行する上で反発、批判は避けられないとはいえ、政策実現への動きを暴力、テロで封じることがあってはならない。この点を明確にしてテロを非難する世論を強めていくことだ。

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