トップオピニオン社説南鳥島文献調査 核ごみ処分への理解広げよ【社説】

南鳥島文献調査 核ごみ処分への理解広げよ【社説】

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定を巡り、東京都小笠原村の渋谷正昭村長は、国が申し入れた南鳥島での文献調査の実施について事実上容認する意向を表明した。

 原発を活用する上で最終処分場は欠かすことができない。調査が国の原子力政策への理解を広げることを期待したい。

 国からの申し入れで実施

 南鳥島で文献調査が行われれば、北海道寿都町と神恵内村、佐賀県玄海町に続き全国4例目となる。ただ国からの申し入れで実施が決まったのは、今回が初めての事例だ。

 寿都町と神恵内村では既に調査が終了しているが、第2段階の概要調査への移行に必要な道知事の同意は得られていない。一方、小笠原村は、国が他の自治体に文献調査の申し入れを行わなければ、次の段階の調査に関する判断を表明しない意向も示している。

核のごみは、原発の使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出した後に残る廃液をガラスで固めたものだ。放射能レベルが低くなるまで数万年以上、人間の生活環境から遠ざけて隔離する必要がある。国は地下300㍍より深い地層に埋められる最終処分場の適地を探している。

 文献調査は2年程度をかけ、地震や活断層がないかなどの記録を調査。概要調査(4年程度)では穴を掘って地盤や地層を分析する。さらに、第3段階の精密調査(14年程度)では地下に実験施設を設けて検証する。文献調査に応じた自治体には国から最大20億円が交付される。核のごみは増え続けており、最終処分場の選定を停滞させることはできない。

 国は昨年2月に閣議決定したエネルギー基本計画に既設原発の「最大限活用」を明記。今月には、東京電力柏崎刈羽原発6号機(新潟県)が約14年ぶりに営業運転に移行した。東電の原発としては福島第1原発事故以降初めてだ。人工知能(AI)開発に必要なデータセンター増設などで電力需要の増加が見込まれる中、原発の利用は一層拡大するだろう。

 またイランによるホルムズ海峡封鎖で中東情勢が混迷し、化石燃料に依存しない原発の重要性が高まっている。国はエネルギー安全保障強化のため、原発の使用済み燃料を再利用する「核燃料サイクル」の実現を目指している。最終処分場の必要性や安全性について丁寧に説明し、国民の理解を得るべきだ。

 都知事は選定に協力を

 都心から約1950㌔離れた南鳥島は戦略的要衝だ。基線を根拠とした排他的経済水域(EEZ)は国土面積よりも広い約43万平方㌔に及ぶ。周辺海域のレアアース(希土類)を巡っては、日米両政府が開発に関する協力覚書を締結した。

 この島に最終処分場ができれば、エネルギー安全保障上の重要性も増すことになるだろう。東京都の小池百合子知事は選定について「将来世代への先送りができない喫緊の課題だ」との認識を示した。概要調査や精密調査への同意を検討するなど、国による選定に向けた協力が求められる。

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