トップオピニオン社説シェルター確保 地下施設の活用拡大急げ【社説】

シェルター確保 地下施設の活用拡大急げ【社説】

 政府が、ミサイル攻撃を受けた場合などに国民が避難する「シェルター」の確保に向けた基本方針を決定した。

 日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、有事への備えを強化することが急がれる。

 核攻撃に備えた研究も

 基本方針では、国民保護法に基づく「緊急一時避難施設」について、2030年までに市区町村単位で全住民を収容できる数を確保する目標を掲げた。都心部などは昼間の人口が多いことから、通勤者なども含めた「昼間人口」でも「市区町村単位でカバー率100%」を目指す方針だ。

 緊急一時避難施設は爆風などからの直接の被害を軽減するためのもので、25年4月時点で全国で約6万1000カ所が指定されている。このうち公共施設が約5万4000カ所を占め、地下施設は約4000カ所にとどまる。基本方針は官民連携を掲げ、民間の地下街や地下駐車場の指定推進をうたった。地上の建物より安全性の高い地下施設の活用拡大が喫緊の課題だ。

 22年末改定の国家安全保障戦略は、「武力攻撃より十分に先立つ住民避難」を可能にするため、「さまざまな種類の避難施設の確保」に取り組むとしている。基本方針では、「長くて数日程度」過ごすための滞在機能の強化や、災害時に帰宅困難者が身を寄せる一時滞在施設と「親和性が高い」として兼用促進も打ち出した。ただ、人口の多い都市部は地下施設を原則とすべきではないか。

 シェルター確保の念頭にあるのは、覇権主義的な動きを強める中国や核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威だ。中国は高市早苗首相の台湾有事発言に反発し、日本への軍事的・経済的威圧を強めている。北朝鮮は「核保有国」としての立場を強調し、ウクライナを侵略するロシアとの関係も深めている。

 基本方針では、さらなるシェルター整備を見据え、核攻撃にも耐えられるシェルターの調査、研究を実施するとしている。イスラエルやスイス、北欧諸国などでは核戦争を想定したシェルターが普及している。

 政府は台湾有事に備え、沖縄県・先島諸島の5市町村を対象に2週間程度の滞在が可能な「特定臨時避難施設」を整備する計画を進めている。この施設は、市町村が国の財政措置を受けて公共・公用施設の「可能な限り深い地中」に設置する。仕様を定めた「技術ガイドライン」では、弾道ミサイルや航空攻撃などの武力攻撃を想定し、壁や床の厚さは原則30㌢以上の鉄筋コンクリート造りと規定。飲食料備蓄やライフライン整備、1人当たり2平方㍍程度のスペース確保も求めた。実効性のあるシェルター整備が求められる。

 抑止力の向上も必要

 一方、防衛省は長射程ミサイルの「12式地対艦誘導弾能力向上型」を陸上自衛隊健軍駐屯地(熊本市)に、「島しょ防衛用高速滑空弾」を陸自富士駐屯地(静岡県小山町)にそれぞれ配備。自衛隊として初めて反撃能力(敵基地攻撃能力)に活用できる実践的な兵器の運用を開始した。シェルター整備と共に、平和維持のための抑止力向上にも取り組む必要がある。

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