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デジタル教科書 利点と欠点踏まえた議論を【社説】

 テクノロジー、AI(人工知能)などの進化により、あらゆるものを取り巻く環境が複雑化し、将来の予測が困難な時代になっている。学習の基本である「読む」は情報・知識を集めて記憶することであり、「書く」は集めた情報を関連付け、つなぎ合わせて考え、出力することによって記憶・知識を定着させることだ。これはどんな時代になろうとも変わらない。

 教科・学年で向き不向き

 2030年度の小学校教科書から順次導入されるデジタル教科書について、政府は正式な教科書と位置付け、検定や無償配布の対象とする学校教育法改正案などを閣議決定した。教科書採択の権限を持つ各教育委員会は「紙のみ」「紙とデジタルのハイブリッド」「デジタルのみ」という三つの選択肢から選ぶことになる。

 文部科学省の検討会議は、導入にふさわしい学年・教科を定める指針の今秋策定に向け議論を始めた。デジタル教科書の利点と欠点を踏まえた議論が求められよう。

 デジタル教科書は数学の図形問題で展開図を動的に表示することなどができるため、子供が考え方の基本を理解するのには向いている。また理科の実験では全ての児童・生徒に器具を配布するのは難しく、デジタル画面で過程を見せる方が簡単だ。

 だが、国語で文章を読み込んだり、深く考えたりする場合、簡単に読んで理解したつもりになっても、書く段階になると、文章にするのが難しい、考えがまとまらない、ということが起きる。小学校低学年では認知能力が未熟であり、膨大な量の情報が一度に入ってくるデジタル教科書では情報の処理能力が追い付いていかない。「読む」によって漢字を覚え、「書く」という出力で知識として定着させることが大切だ。

 もっとも、生まれた時からインターネット環境が整い、スマートフォン、タブレット端末、動画配信サービス、SNSなどの利用環境に囲まれ、AIやデジタルツールを自由に使いこなすα世代(一般的に2010~24年生まれ)にデジタル機器を使わせないというのは酷な話である。高校、大学、社会人と人生を歩む上でデジタルツール、AIの使用は避けて通れない。

 デジタル教科書の利点は、デジタル機能の活用によって、学習指導要領が目指す「主体的・対話的で深い学び」の実践が深まることだ。また、障害児など特別な配慮が必要な子供たちが学びやすくなる点も大きい。このほか、デジタル教科書の使用が主になれば、印刷コストが削減され、教科書の改訂作業も簡単になっていくだろう。

 現場に応じた利活用を

 有識者の間ではデジタル教科書について「言葉の力と考える力が衰えてしまう」「紙の教科書で不便はなかった」「デジタル先進国では子供の身心への悪影響を考慮して紙への回帰が始まっている」などの反対意見もある。一方、「便利で使いやすい」「時代の流れだ」と活用を支持する声も多い。どちらにしても、統計によるしっかりとした根拠や証拠を示し、使用年齢、適用する教科を議論し、現場に応じた利活用を考えたい。

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