トップオピニオン社説ミャンマー新政権 中国を利する軍政固定化【社説】

ミャンマー新政権 中国を利する軍政固定化【社説】

10日、ネピドーで記者団の取材に応じるミャンマーのミンアウンフライン大統領(EPA時事)
10日、ネピドーで記者団の取材に応じるミャンマーのミンアウンフライン大統領(EPA時事)

 ミャンマーで5年前にクーデターを起こし、アウンサンスーチー氏率いる民主政権を倒した当時の国軍総司令官、ミンアウンフライン氏が大統領に就任した。総選挙および大統領選出による新政権発足は民政移管を装ったもので、国軍による政治支配を固定化させるための茶番にすぎない。

期待できない民主化

 大統領を選出した連邦議会の議員は、軍事政権が昨年末から年初にかけ、国民民主連盟(NLD)など主要な民主派政党を排除して強行した総選挙で選ばれ、86%を親軍派が占める。

 1962年以来、国軍統治が続いてきたミャンマーでは、2011年に形式的な民政移管が実施された。国軍出身のテインセイン大統領(当時)と国軍系の与党・連邦団結発展党(USDP)の下、当初は形を変えただけで強権的な国軍統治が続くと見られていたが、政治犯の釈放や少数民族武装勢力との和解交渉、海外からの投資促進など政治改革と経済開放が進展した。

 要は言葉で取り繕う偽善ではなく、希望ある未来に向けて国を開くトップの本気度の問題に帰する。しかしクーデター後の軍事政権は、ミンアウンフライン氏への権力集中や民主派に加えられた容赦のない迫害、ダイナミズムに欠ける経済運営など未来に花が咲き実を実らせるような種を一つも播(ま)いていない。

 軍事政権をバックアップするのは、中国やロシアなどの強権国家だ。レアアース(希土類)など資源を外交交渉の武器として使う中国にとって、ミャンマーの重希土類は垂涎(すいぜん)の的だし、雲南省からインド洋へ出る陸の回廊として地政学的な要衝でもある。ロシアも武器輸出先として影響力増大に余念がない。

 一方、欧米諸国の制裁解除および投資と援助の再開への動きは皆無だ。暴力の停止やスーチー氏らの解放と民主派勢力との対話がなければ、民主化や国民和解の進展は期待できず、軍事政権の国際的孤立は今後も続く見込みだ。

 日本はクーデター後、新規の経済協力を見合わせ当事者間の対話を促してきた。これからも東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国などと連携し、政治犯の釈放や民主派との対話などを粘り強く働き掛ける必要がある。

 シンガポールのシンクタンク「ISEASユソフ・イシャク研究所」が行ったASEAN加盟11カ国の識者らへの調査によると、中国か米国のいずれかと同盟を結ぶことを余儀なくされた場合、「中国を選ぶ」と回答した割合が加盟国平均で52・0%と、2年ぶりに過半数を超えた。米国への「信頼」が低下し、「不信」の上昇が見られた。

 一方、日本は「最も信頼できる国・地域」で8年連続1位だった。調査報告書は「日本は引き続き最も高く、かつ一貫した信頼度を維持しており、地域にとって安定的で頼りになるパートナーとしての評判を確固たるものにしている」と評した。

東南アを裏庭にするな

 ASEAN内で米国への信頼が揺らぐ分、中国がその空白を埋めようとしている。最も信頼できるとされるわが国が座視したままでは、ASEANは中国の裏庭になってしまうだろう。

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