
人類の月面再訪を目指す国際月探査「アルテミス計画」の一環で打ち上げられた有人宇宙船「オリオン」が、人類史上地球から最も遠い地点に到達した。オリオンは月の軌道を周回して地球に帰還する。
有人月探査は約半世紀ぶり。アルテミス計画は月面基地建設や月を中継地とした火星探査も構想にあり、将来の日本人飛行士の月面着陸も想定されている。有人宇宙開発の新たな時代を開くものとして今後の展開を楽しみにしたい。
50年ぶり有人月探査
「あなた方は歴史を作った。米国を誇らしくした」――。トランプ米大統領は、オリオンに搭乗している4人の宇宙飛行士と交信した際、こう称賛した。
オリオンは米東部時間6日午後7時(日本時間7日午前8時)ごろに月の裏側を通過し、これまでで最も遠い25万2756マイル(約40万6771㌔)に達した。
宇宙空間で爆発事故に見舞われながら、奇跡的に地球帰還を果たしたアポロ13号が1970年に樹立した24万8655マイル(約40万171㌔)を56年ぶりに更新。4人には昨年死去したアポロ13号の船長ジム・ラベルさんが生前に録音していた「歴史的な日だ。多忙だと思うが、景色を楽しむのを忘れないで」というメッセージも届けられた。
オリオンは、米航空宇宙局(NASA)が南部フロリダ州のケネディ宇宙センターで、新型ロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」によって打ち上げた。
NASAが有人の月探査宇宙船を打ち上げるのは、53年4カ月ぶり。69年7月にアポロ11号で人類初の月面着陸を成功させたが、72年12月のアポロ17号を最後に途絶えていた。
NASAは2022年11月、アルテミス計画の第1弾ミッションで無人宇宙船を月周回軌道に投入し、同年12月に帰還させることに成功。今回の有人月周回は第2弾ミッションである。
27年に計画している第3弾ミッションでは、地球低軌道でオリオンと有人着陸システムの試験飛行などを実施。28年に第4弾として米国人宇宙飛行士による月面再着陸を目指す。
もっとも計画は遅れ気味で、第1弾ミッションも19年の予定だった。その後も計画通りには進まず、今回の第2弾ミッションも何度も延期された。NASAは月周回軌道上に宇宙基地を建設する計画(ゲートウェイ構想)を一時停止するなど、見直しを進めている。
日本人の月面着陸も
ゲートウェイ構想見直しは、月面基地を優先する方針によるものだ。アルテミス計画が基地建設を予定している月の南極域は資源、特に氷の中でも水が凍った「水氷」が注目されている。飲料水だけでなく、酸素やロケット燃料として使用できる可能性があり、月が火星探査への中継基地にもなり得る。中国も30年までに自国の飛行士による月面着陸を目指しており、ここでも米中競争が激化している。
日本は月周回衛星「かぐや」などで取得した月面データや与圧ローバの提供、日本人飛行士の着陸などで協力する。日本人飛行士や日本の機器が月面で活躍する姿が待ち遠しい。





