高校授業料の無償化を2026年度から拡充する改正法が成立した。
家計の教育費負担を大幅に軽減し、経済的理由で進学を諦めざるを得ない生徒の未来を切り開くものだ。しかし、さまざまな課題が生じていることも否めない。
全てが無償ではない
改正法では、高校生向けの「就学支援金」の所得制限を私立を含め全国で撤廃する。現在の支給額は私立全日制で11万8800~39万6000円だが、26年度から支給上限を一律で私立授業料の全国平均相当額である45万7200円に引き上げる。私立通信制も29万7000円から33万7200円となる。支援金は保護者に支払われるのではなく、手続きをすることで自治体から学校に振り込まれる。
新制度の対象となるのは高校のほか、中等教育学校後期課程、特別支援学校高等部、高等専門学校(1~3年)、専修学校高等課程、専修学校一般課程および各種学校のうち国家資格者養成課程(中学校卒業者を入所資格とするもの)を置くものなどとなっている。外国人学校やインターナショナルスクールなどは対象外となる。
ただ無償化といっても主に授業料が対象であり、全てが無償になるわけではない。入学金、教材費、制服代、修学旅行費、パソコン購入費などは自己負担だ。このため、東京都や大阪府のように独自の財源で上乗せ支援を行う自治体とそうでない地域で教育費負担の格差が生じることが懸念される。
また、私立の授業料無償化を拡充すれば公立の志望者減少が加速するとみられている。大阪では公立の定員割れが深刻な状況で、26年度の入試では全日制などの140校中67校が定員を割ったという。
地域産業に不可欠な人材を育成する公立の工業、農業高校などの実習施設は維持費が高額で、公立離れが進めば統廃合が一層進む可能性がある。これでは多様な教育の場が失われるだけでなく、地方の衰退にもつながりかねない。公立には、特色ある教育内容などで魅力を高めることが求められよう。
私立を巡っては既に受験倍率が上昇傾向にあるため、幼少期からの塾通いが加熱している。高校無償化を拡充すれば、浮いた授業料を活用できる経済力のある家庭が有利になるという「逆転現象」に拍車が掛かるのではないか。
「本当に必要な層」への支援が薄まることへの批判も根強く、無償化より「教育の質の向上」に予算を使うべきだという意見もある。
安心与える環境整備を
高校無償化の目的は「教育の機会均等」だ。親の経済力にかかわらず、子供が学びたい学校に通うことのできる環境を実現する狙いがある。ただ新たな格差が生じれば、教育環境にも影響を及ぼす恐れがある。
重要なことは、今回の法改正が本当に生徒のためになるかどうかだ。改正法には施行後3年以内に必要に応じて制度改正を行う見直し規定も盛り込まれている。機会均等を保障しつつ、生徒の可能性を伸ばすための教育制度を不断に追求すべきだ。






