トップオピニオン社説クマ対策 個体数を管理し共存図れ【社説】

クマ対策 個体数を管理し共存図れ【社説】

民家近くに出没したクマ=2025年10月、秋田市
民家近くに出没したクマ=2025年10月、秋田市

 環境省はクマによる人への被害の増加を受け、都道府県で対策を作成する際のガイドラインを改定した。基本方針を「保護」から「管理」へと見直すもので、対策は大きな転換点を迎えた。

 過疎化で緩衝地帯消失

 クマによる2025年度の被害者数は今年2月までに237人に上り、過去10年で最多。死者数は北海道や東北を中心に計13人で初の2桁となった。市街地にまでクマが出没するという異常事態が相次いだ。

 被害が増大した背景には、餌であるブナやドングリの凶作、過疎化による里山の荒廃、個体数・分布の拡大などが挙げられている。餌は年によって豊作となる可能性があるが、個体数の増加は餌不足の原因ともなり、それまでの生息域の外にクマを押し出す結果となっている可能性がある。

 約4年ぶりとなったガイドラインの改定では、約450件のパブリックコメントが寄せられた。それらも踏まえ、基本方針をクマの個体数の維持・増加を目指す「保護」から、維持・減少を図る「管理」へと転換させた。

 「保護」重視の対策では、クマの自然増加率の範囲内で捕獲数の上限を定めてきた。これに対し新しいガイドラインでは、個体数の多い地域では明確な捕獲数を設定し、個体数を減らして管理する。ヒグマについては5、ツキノワグマは18の区域に分け、成獣で400頭以上の個体群がある場合は、目標の頭数を設定して捕獲することを勧めている。

 もう一つのポイントは、人とクマのすみ分けを徹底するため「ゾーニング管理」を導入することだ。市街地と農地を合わせた地域を「排除エリア」、その周辺を「管理強化エリア」と設定。排除エリアに侵入するクマを「問題個体」として「原則捕殺」することが適当としている。

 「管理強化エリア」では、定着防止のため、積極的な捕獲や藪(やぶ)の刈り払いなどを徹底するとしている。里山が過疎化によって荒廃し、人の姿が消えたことからクマの生息域と市街地の緩衝地帯がなくなってしまった。その穴を埋めるための措置が必要とされているのだ。

 昨年9月から施行された「緊急銃猟制度」によって、人の日常生活圏に侵入したクマなどに対し、市町村長の判断で銃猟が可能となった。しかし、これはあくまで緊急事態への対処だ。平時から放置された果樹の伐採や生ごみの適切な処理など、クマの誘因物の排除で侵入しないようにする必要がある。

 人口減に直面する地方は、インバウンド(訪日客)観光に期待するところが大きいが、クマ被害の危険があれば敬遠されるだろう。環境省は国立公園を利用する訪日客の数を30年に現在の1・4倍の1400万人に増やす目標を掲げている。この目標達成のためにも、クマ対策はしっかり進めていきたい。

 すみ分けを徹底したい

 今年は既に冬眠明けしたクマの出没が北海道や東北で相次いでいる。岩手県では人身被害も出ており、3月下旬に例年よりも早く「出没注意報」が出された。昨年同様、クマの出没に注意するとともにすみ分け対策を徹底したい。

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