トップオピニオン社説売春防止法見直し 「性の尊厳」で論議進めよ【社説】

売春防止法見直し 「性の尊厳」で論議進めよ【社説】

 「春」を「売る側」だけが罰せられ、「買う側」が野放しになっているのはどう見ても理不尽である。70年前に制定された売春防止法について、有識者らによる検討会(法務省)が見直し論議を始めた。買う側を処罰対象にするのか、法定刑が適切かなどが焦点となる。

買春野放しに批判強まる

 同法第3条は「何人も、売春をし、又はその相手方となってはならない」とし、売春だけでなく買春も禁じているが、それ自体に罰則は設けていない。処罰の対象としているのは、売春の周旋(2年以下の拘禁刑または5万円以下の罰金)のほか、公衆の目に触れる場所での客待ち・勧誘など売春する側の行為に限定し、6月以下の拘禁刑または2万円以下の罰金を科す。

 制定当時は勧誘行為に罰則を科すことで、女性の保護と更生につなげる狙いがあった。そこは現在も変わらず、客待ちなどで摘発されるのは年間300件前後だが、その多くは不起訴になっている。だが、近年はホストクラブへの借金返済や貧困・虐待などのため、繁華街の路上で客待ちし摘発される女性が増える一方、男性に対しては事実上の野放しになっている現行法への批判が強まっている。このため、高市早苗首相が昨年11月、平口洋法相に見直しの検討を指示していた。

 法の狙いが軽い刑で女性の保護・更生につなげることにあるとしても、買う側が処罰されないのではあまりにいびつである。法務省刑事局の調査によると、主要先進国で、買う側のみを処罰しないのは日本だけだ。買春を罰することは売春の減少につながるだろう。

 改正の焦点はもう一つある。何を売買春とするかという定義の見直しだ。現行法は売春を「対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交すること」としている。性交に至らない類似の性的サービスは対象外としているが、本質的に性交と同じではないか。禁止行為の範囲拡大も検討すべきである。

 一方、一部に売春を「セックスワーク(労働)」として認めるべきだとする主張がある。フランスとスウェーデンは売春は処罰せず、買春自体とその勧誘だけを処罰対象としている。

 売春を、生活の糧を得るための女性の労働行為とみる考え方は昔からあったが、これは性の本質を見誤っている。売春防止法の第1条(目的)に、売春は「人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすもの」とある。

 性犯罪は「魂の殺人」と言われるように、性は人の尊厳に直結するものだと捉えるべきだ。この視点がないと、弱い立場の女性救済を名目にした売春の正当化を許してしまい、社会規範の崩壊を招く。宗教をはじめ文化の違いを考慮せず、海外の例を持ち出して、売買春の非処罰化を主張するのは、国を危うくする暴論と言える。

性規範意識の向上が重要

 ただ、性欲と金銭欲が絡んだ売買春は罰しただけではなくならない。法改正論議が始まったのを機に、家庭・学校・社会・宗教などあらゆる教育の場を通じて性規範意識を高めることの重要性を確認すべきである。

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »