集団的自衛権の行使を一部容認し、戦後日本の安全保障政策の転換点となった安保関連法の施行から10年を迎えた。今後、日米同盟を「さらなる高みに引き上げる」と表明した高市早苗首相の取り組みは、憲法9条に起因する法整備の限界を克服できるかが焦点となる。
限度がある憲法解釈
日米首脳会談で首相は、ホルムズ海峡への艦船派遣を期待したトランプ大統領に「やれるものとやれないもの」があると説明した。
一方、昨年の臨時国会では中国の軍艦による台湾攻撃を想定した「存立危機事態」答弁を行い、中国が強く反発した。それだけ大国間で軍事的緊張が高まる情勢の下、わが国の集団的自衛権は注目されている。
が、分かりにくいのは否めない。安保関連法は集団的自衛権を部分的に行使できる「存立危機事態」、個別的自衛権を行使できる「武力攻撃事態」、後方支援に当たる「重要影響事態」などの段階的な危機レベルを設定している。有志連合軍に参加するなどした自衛隊が他国軍の航空機や艦艇を守る「武器等防護」、国連平和維持活動(PKO)を行う自衛隊の部隊から離れた場所で襲われた民間人を保護する「駆け付け警護」が可能になった。
ただ、憲法9条の解釈を変更しての法制化は大きな議論となった。2014年に安倍晋三内閣は、わが国は集団的自衛権を保有するものの行使を禁じているとした政府の憲法解釈を変更し、部分的に集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行い、15年に国会に安保関連法案を提出した。反対した民主党、社民党、共産党などの野党は、今や少数勢力になった。
当時、既に中国の南シナ海、東シナ海への海洋進出は顕著になり、わが国の尖閣諸島に対しても「領有」を主張して公船が領海侵犯を繰り返した。また、ロシアはウクライナのクリミア半島を併合する「力による現状変更」を強行し、北朝鮮の核兵器・弾道ミサイル開発はとどまることなく続いている。
万一、わが国で有事が起きた際、米軍の来援を頼みながら自衛隊は米軍を守ることができない憲法解釈を放置しては、日米同盟、ひいてはわが国の存亡に関わる。
しかし、安保関連法は弥縫(びほう)策である。憲法制定当時、9条は個別的自衛権さえも否定するものと解釈された。戦力不保持、国権を発動した交戦権を否定した条文の解釈には限度がある。安保関連法施行10年の節目に国連憲章が加盟国に認めた個別的、集団的自衛権を普通に行使できるように国会で改憲に向けた審議を進めるべきだ。それが日米同盟を「さらなる高みに引き上げる」糸口ではないのか。
有利な環境築く議論を
自衛隊は現憲法の制約の下で法律で書かれた「やっていいこと」以外はできない「ポジティブリスト方式」を取っており、有事の予測不能な事態に通用するか不安もある。世界の多くの軍は「やってはならない」ことだけを規定した「ネガティブリスト方式」を取っている。
莫大(ばくだい)な防衛費を費やす以上、有利な安保環境を築くように建設的な議論をすべきだ。






