トップオピニオン社説南鳥島レアアース 国産化で対中依存減らせ【社説】

南鳥島レアアース 国産化で対中依存減らせ【社説】

海底で集めたレアアース(希土類)の粉=2013年10月、神奈川県横須賀市の海洋研究開発
海底で集めたレアアース(希土類)の粉=2013年10月、神奈川県横須賀市の海洋
研究開発

 内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の海洋チームは、南鳥島(東京都小笠原村)の海底からレアアース(希土類)の試掘採取に成功し、日米首脳会談でも日米両政府はレアアースの開発に関する協力覚書を締結した。早く国産化を実現し、レアアース大国を目指すべきだ。

中国が外交カードに利用

 SIPの海洋チームは、海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」を用い、南鳥島周辺の排他的経済水域(EEZ)で水深6000㍍の海底からレアアースを含む泥の採取に世界で初めて成功した。この海域のレアアースの埋蔵量は少なくとも1600万㌧とみられている。

 海底鉱物資源の採鉱では、環境への配慮が重要な課題だ。今回、SIPの海洋チームは、海洋石油・天然ガスの開発手法である「閉鎖型泥水循環」方式を採用。周りの海洋環境に影響を与えないようにし、環境モニタリングも行った。来年は採取量を大量に増やし、2028年3月までに国産化の判断をする予定だ。

 レアアースはハイテク製品に欠かせない戦略物資だ。現在、中国が圧倒的なシェアを握り、それを外交カードにも使っている。10年の沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件では、レアアースの対日禁輸を実施。昨年の高市早苗首相の台湾有事発言でも軍民両用品の対日輸出規制を強化し、この中にはレアアースが含まれる可能性がある。

 レアアースの対中依存度を減らすことは、経済安全保障の最重要課題の一つである。1月にワシントンで開かれた先進7カ国(G7)と資源国の財務相会合では、対中依存度を迅速に引き下げることで合意。サプライチェーン(供給網)の多様化に向けた連携を確認した。

 そういう中で、南鳥島周辺海域のレアアースは対中依存度低減の切り札となるだけでなく、日本をレアアース大国、海洋資源大国とする可能性を秘めている。この海域には、レアアース以外にも、マンガン団塊、コバルトリッチクラストなどレアメタル(希少金属)の豊富な資源の存在も確認されている。

 今後、産業化、国産化を進めるためには、製錬・精製技術の確立、そして輸送コストを抑えるなどの課題が残っている。SIPチームは今後、南鳥島に泥水を脱水する施設などを建設し、運搬するコストを低減する考えだ。ただ、南鳥島は東京都心から1900㌔も離れた絶海の孤島で、自衛隊、国土交通省、気象庁の職員だけが常駐。生活インフラはほぼ皆無という。

 レアアースを国産化するより、低価格の中国産に頼るのが安上がりとの考えもある。しかし、SIPの海洋チームを率いる石井正一氏は「経済性以上に経済安全保障の視点が重要だ」と強調する。

環境に配慮した採鉱を

 中国は放射性物質などによる環境破壊を代償に低価格のレアアースを供給してきた。しかし将来的には、環境意識の高まりで低価格を維持することができなくなる可能性もある。環境に配慮した南鳥島でのレアアースの採鉱は大きな意味を持ってくるはずだ。

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