文部科学省は、2027年度から高校で使われる教科書の検定結果を公表した。8教科に22社200点の申請があり、21社196点が合格した。GIGAスクール構想に向けたAI(人工知能)・生成AIの使用上の注意点、情報リテラシーを扱う教科書が目立った。
指導要領に沿う教科書
前回21年度に行われた高校教科書の検定で合格した186点には6683件の検定意見が付けられた。今回は196点に対して3760件で大きく減少した。文科省によると、単純な誤記や誤植のほか、生徒が誤解する恐れがあるものへの指摘だったという。減少の要因として現行の学習指導要領になって2巡目に入ったことが挙げられる。
AIや情報リテラシーに関する記述が増えるのは社会の変化に合わせる上で致し方ない。生まれた時からスマートフォン・タブレット端末が身近にあったα世代(10年~24年ごろ生まれ)の子供たちのAI機器使用を止めることはできない。デジタル教科書の使用も進められている。
教科書の多くが情報端末を積極的に使うことを想定して説明しているが、課題やリスクへの向き合い方が不足しているように思える。課題について多く語ると、文科省によるGIGAスクール構想、教科書のデジタル化などの推進を抑え、生徒たちの多用を阻害してしまうからだ。とはいえ、情報の扱い方次第で、知らず知らずのうちに他者だけでなく、自分をも傷つけてしまうことも起こり得るのだとしっかり周知すべきだ。
問いに対する生成AIの答えには間違いや盗用が含まれていることを知る必要がある。答えをそのまま論文などに使用すると著作権に抵触する可能性がある。こども家庭庁が今年2月に発表した調査結果では、高校生の46%が生成AIを使用したことがあるとしている。
調べものをするには短時間で効率的に情報を集めることができる利点もある。ただ、自分の考えを加え、事実かどうか確かめながら文章を構成していかなければ、書く力、まとめる力は育たない。さらに、端末の長時間使用に伴う視力低下などの健康被害や学業への影響をしっかりと教える必要もある。
令和書籍の「歴史総合」1点、「世界史探究」1点、「日本史探究」2点の計4点が不合格となった。令和書籍の中学社会科教科書は24年に合格して話題になったが、今回の教科書はほぼ同じ内容で高校指導要領に則していないという理由だった。特定の教科書が他と違った内容や視点を記している場合、大学受験などに大きな影響を与えることになる。
デジタル化は時代の流れ
社会科教科書の検定では、政府の公式見解に基づいた修正を求めるケースもある。一方、一度合格させた教科書に大量の書き換えを求める「ダブルスタンダード」の疑いがあることも指摘され、検定の透明性を求める意見もある。教育の「中立性」と「多様な視点」のバランスが常に論点になる。学習の基本は「読む」という入力と「書く」という出力。デジタル化は時代の流れだが、正しい入力と出力を育む教科書であってほしい。






