
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先で埋め立て工事が行われている同県名護市の辺野古沖で、高校生を乗せた小型船2隻が転覆し、女子生徒と船長の計2人が死亡する痛ましい事故が起きた。
小型船は移設工事への抗議活動を行ってきた「ヘリ基地反対協議会」が運航するものだった。
疑問残る生徒の安全対策
事故は16日午前に起きた。同志社国際高(京都府)の研修旅行中に、「平和学習」の一環として2年生18人が船2隻に分かれて乗っていた。海上保安庁によると、現場は辺野古沖の立ち入り制限区域の外側で、2隻は高波の影響で転覆した。
当時、波浪注意報が出ており、海保の船が注意喚起していた。死亡した牧師の船長について、学校側は、辺野古移設の反対運動で「有名」だから信頼を寄せていたという趣旨の発言をしている。この船長に出航の判断を任せることが妥当だったのか、大きな疑問が残る。
ヘリ基地反対協議会は、日常の抗議活動以外に見学者らを乗せることがあったというが、転覆した2隻は海上運送法に基づいて事業登録されていなかったことが分かっている。業務上過失往来危険と業務上過失致死傷の疑いもあり、運輸安全委員会が調査を始めた。再発防止へ究明を求めたい。
そもそも、事業登録していない船になぜ生徒を乗せたのか、学校側は抗議団体の実態を把握していたのか、なぜ引率教師が乗っていなかったのか、保護者には抗議船であることをきちんと説明していたのか――。疑問は尽きない。学校は原因究明へ第三者委員会を立ち上げる方針という。生徒の安全対策が十分に取られていたかどうかが問われる。
辺野古沖の研修について西田喜久夫校長は「現在沖縄で起きている出来事を実際の現場で知る学習の一環と位置付けている」と説明し、特定の政治思想を持たせる意図はないことを強調した。果たして、抗議船に生徒を乗せることが「平和学習」になるのかという疑問がある。辺野古は日米同盟や安全保障を象徴する現場であることに変わりはないが、学校側はほとんどが移設を黙認しているとされる辺野古地域住民に思いを馳(は)せたことがあるのか。
辺野古沖での研修は10年ほど前から実施しているという。辺野古移設を巡る抗議活動が危険と隣り合わせであることを知らなかったのだろうか。ヘリ基地反対協議会のメンバーらは体を張って、辺野古のキャンプ・シュワブのゲート前などで頻繁に活動していることで地元では知られている。2024年6月には、埋め立て土砂の搬出に使われる名護市の安和桟橋前の公道で、ダンプカーの通行を妨げようとした活動家の女性を排除しようとした警備員が死亡する事故が起きている。
知事は抗議の自粛求めよ
玉城デニー知事は今回の事故を「重く受け止める」と語っただけで、危険な抗議行動の自粛を求める発信はしていない。平和学習の安全についての指針を示したり、抗議活動について対策を講じたりしなければ、さらなる犠牲者を生み出しかねない。






