
米国とイスラエルによる軍事作戦で攻撃を受けるイランがホルムズ海峡を事実上封鎖したことに対して、トランプ米大統領は日本、韓国、英国、ドイツ、中国などに艦艇派遣を求めた。海峡は航行の自由が認められており、これを妨げるのは国際法違反だが、艦艇派遣はイランが参戦と見なすリスクがある一方、米国の理解を得る措置を模索しなければならない。
封鎖されたホルムズ海峡
高市早苗首相の訪米前にトランプ氏はホルムズ海峡への自衛隊派遣を要請した。わが国が輸入する原油の9割がホルムズ海峡を輸送ルートとしており、影響は深刻だ。イランが諸国の原油輸送を人質にして踏み絵を踏ませることは許容できるものではない。
米イスラエルの「壮絶な怒り」と名付けられた軍事作戦で、イランは最高指導者ハメネイ師が殺害されたほか、側近を含めて政権中枢の幹部らを失った。イラン側は徹底抗戦を宣言しており、軍事衝突の長期化が懸念される。
2003年のイラク戦争ではイスラエル打倒をアラブの大義として掲げたイラクのフセイン政権が崩壊した。イラクの大量破壊兵器所持を理由に戦端を開いたが、イスラエル防衛という結果をもたらした性質は、今回のイランへの軍事作戦と共通すると言えよう。
イラク戦争は大量破壊兵器に対する査察受け入れを求めた国連決議にイラクが違反したことを理由に行われ、日本は有志連合に加わって自衛隊を派遣した。トランプ氏がホルムズ海峡封鎖によって大きな影響を受ける諸国に艦艇派遣を求めたのは、イラク戦争の例を想定してのことだろう。
首相の訪米に当たり政府は憲法や現行法制の制約の範囲内でどのような対応が可能か検討を開始したが、国連がロシアのウクライナ侵攻によって機能不全になっていることがハードルを高くしている。イラク戦争の際の特措法は、憲法前文は国連中心主義に立ち集団安全保障への参加を妨げていないと解釈して制定され、非戦闘地域に限定した人道支援を目的としたものだった。
また、わが国が艦艇派遣により米イスラエル軍事作戦に参加したとみられてはならない。これは各国とも慎重になる最大の懸案事項だろう。15年に安全保障関連法が制定されたが、同法による自衛隊派遣は米国の同盟国としての参戦に等しい。
ホルムズ海峡の航行の安全問題はイラン革命後の1980年代から起きており、当時も米国は掃海艇の派遣を日本に求めていた。90年代に入りイラクがクウェートを侵略した湾岸戦争が勃発し、日本は90億㌦(当時のレートで1兆2000億円)を拠出したが、クウェートが米紙に出した諸国への感謝広告に日本は記載されず、同戦争後の機雷除去のため初の掃海艇派遣に踏み切った経緯もある。
自国の原油輸送守るため
あくまで紛争が発生した地域の海域で自国の原油輸送ルートを守るため、また、諸国の航行の安全を確保するための軍事作戦とは別の行動としての対応を模索する必要がある。






