小学館が漫画アプリ「マンガワン」で連載「常人仮面」の配信を停止した問題で、10代女性への性加害で罰金刑を受けた原作者のペンネームを変えて起用していたことが分かった。
設置された第三者委員会は、起用の経緯などを綿密に調査する必要がある。
性加害の原作者を起用
原作者は北海道の私立高校教員だった2020年、教え子だった女性への児童買春・児童ポルノ禁止法違反罪で略式起訴され、罰金刑を受けた。小学館は当時連載していた「堕天作戦」を中止したが、22年にペンネームを変えて「常人仮面」の連載を始めた。
性加害は被害者の心に深い傷を与え、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症させるケースもある。女性より上の学年に複数の被害者がいたとの情報もあるという。
事件を巡っては、女性が継続的に性被害を受けていたとして損害賠償を求める訴訟を起こし、札幌地裁は先月、原作者に1100万円の支払いを命じた。小学館は公式サイトで「本来であれば原作者として起用すべきではありませんでした。編集部として責任を重く受け止めています」とコメントしたが、起用の理由について詳細な説明が求められよう。
一方、担当編集者は21年の和解協議で、事件の口外禁止などを盛り込んだ公正証書の作成を女性側に提案していた。女性の気持ちを踏みにじるような対応だ。女性は今回、代理人弁護士を通じて「(過去連載の)休載の本当の理由を伝えるべきだと思っていた」とのメッセージを発表した。
小学館は別の漫画原作者の性加害についてもサイトで公表した。この原作者は路上で女子中学生の胸を触り20年に有罪判決を受け、当時週刊少年ジャンプで連載していた作品が打ち切りになった。マンガワン編集部は24年、その事実を把握した上でペンネームを変えて起用することを決定。別の名前とした理由については「被害に遭われた方への配慮が最大の理由だった」としているが、違和感を覚える読者は多いだろう。
さらに、小学館の従業員が取引先に対して取引関係上の優位性を利用して性的な行為を求める事案もあった。社内で性倫理を軽んじる風潮が蔓延(まんえん)していたと受け取られても仕方がない。
14年に始まったマンガワンでは、オリジナル連載や完結済みの作品を閲覧できる。スマートフォンの普及に伴って利用者数が増え、16年には漫画アプリとして国内最多の月間利用者数を記録するまでに成長した。
しかし一連の問題を受け、マンガワンで連載中の漫画家らがX(旧ツイッター)上で「現在配信の停止を申し入れております」「今後小学館のお仕事は一切お引き受けいたしません」などと相次いで抗議の声を上げた。小学館の漫画イベントや贈賞式も延期する事態になっている。
信頼損なったことは残念
日本の漫画は世界中で人気の高い文化コンテンツだ。それだけに漫画界への信頼を損なった今回の問題は残念だ。小学館は企業風土の改善を急ぎ、再発防止を徹底しなければならない。






