
反撃能力(敵基地攻撃能力)の要となる長射程ミサイル「12式地対艦誘導弾能力向上型」が31日に陸上自衛隊健軍駐屯地(熊本市)に、地対地ミサイル「島しょ防衛用高速滑空弾」が陸自富士駐屯地(静岡県小山町)に配備されることとなった。反撃能力に活用できるミサイルの配備は国内で初めてだ。中国やロシア、北朝鮮の脅威が高まる中、抑止力向上に向けて反撃能力の整備を着実に進めるべきだ。
中露朝の脅威高まる
12式地対艦誘導弾能力向上型は1000㌔程度の飛翔が可能で、熊本からは中国大陸沿岸部や北朝鮮が射程圏内に入る。島しょ防衛用高速滑空弾は高高度から超音速で飛行し、迎撃されにくい変則的な軌道を描く。敵の射程圏外から相手部隊を排除する「スタンド・オフ・ミサイル」は来年度以降、北海道や宮崎県の駐屯地などにも順次配備される。
政府は2022年12月に改定した安全保障関連3文書で、敵のミサイル基地をたたく反撃能力の保有を明記した。打撃力を米軍に頼ってきた戦後日本の安保政策が大きく転換された。これに対し、保有は憲法9条に基づく専守防衛政策を逸脱するものだとの批判がある。だが1956年2月、当時の鳩山一郎首相は国会答弁で「他に手段がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能」としている。
もともと政府は、北朝鮮の弾道ミサイルを念頭に陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入を計画していたが断念。北朝鮮のほか、中国やロシアが低空を変則軌道で滑空し、レーダーでの追尾が難しい極超音速兵器などの開発を加速させており、対処するには反撃能力が欠かせない。
反撃能力の運用には、ミサイルを搭載した移動式発射台や艦船などの位置を特定する必要がある。高い情報収集能力を持つ米軍との連携を強化するとともに、多数の小型衛星で目標を探知・追尾する「衛星コンステレーション」の構築も進めなければならない。
中国の李強首相は全国人民代表大会(国会に相当)で「台湾独立の分裂勢力に断固として打撃を与える」と宣言するなど、習近平国家主席が目指す台湾統一に向けて強硬姿勢を明確にした。「台湾有事は日本有事」であり、今回の長射程ミサイル配備を対中抑止につなげるべきだ。
戦闘継続能力などを考慮したことで、南西諸島に長射程ミサイルは配備されないが、台湾有事を念頭に防衛体制を強化することも欠かせない。政府は日本最西端の沖縄県・与那国島に防空ミサイル部隊を配備する時期を30年度としている。与那国島は台湾まで約110㌔の距離にあり、中国が22年8月に台湾周辺で行った軍事演習では、中国の弾道ミサイルが与那国島から約80㌔の地点に落下した。抑止力強化に向け、島民の理解を得ていく必要がある。
一層の防衛力強化を
高市政権は今年中に3文書を改定するため、4月下旬にも有識者会議を設置する。反撃能力の向上など一層の防衛力強化を図らなければならない。






