トップオピニオン社説睡眠障害 診療科名明示で減らしたい【社説】

睡眠障害 診療科名明示で減らしたい【社説】

 厚生労働省の専門部会が、不眠症などの「睡眠障害」について、医療機関が掲げる診療科名に追加する方針を了承した。

 睡眠に関する問題は日本人の5人に1人が抱えているとされる。診療科名の明示により、患者が適切な医療を受けやすくなることを期待したい。

分かりにくい受診先

 睡眠障害は不眠症をはじめ、日中に過剰な眠気がある過眠症、呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群など睡眠に関連する病気の総称だ。生活に深刻な影響を及ぼすだけでなく、悲惨な事故を招いたケースもある。2012年4月に関越自動車道で乗客45人が死傷した事故を起こしたバスの運転手は、睡眠時無呼吸症候群を患っており、事故時も居眠り運転をしていた。

 現在は精神科や内科、耳鼻咽喉科などで診療が行われているが、患者にとっては受診先が分かりにくい。日本睡眠学会は昨年4月、厚労省に診療科名への追加を要望。今回の専門部会の了承を受け、厚労省は学術団体の意見を聞いた上で政令を改正する。今年夏ごろまでに施行される見通しで、具体的な診療科名としては「睡眠障害内科」「精神科(睡眠障害)」などが想定されている。診療科名の明示を睡眠障害の減少につなげたい。

 かねて日本人は、睡眠時間の短さが指摘されてきた。経済協力開発機構(OECD)の21年の集計では、対象となった約30カ国の平均は8時間28分だったが、日本は最短の7時間22分だった。これは本来必要な睡眠時間より1時間ほど短いという。

 慢性的な睡眠不足はうつ病や生活習慣病、認知症のリスクを高める。また集中力や判断力、創造性を低下させ、労働生産性を押し下げる。睡眠不足による日本の経済損失は年間で最大15兆円に達するとの試算もある。政府は、健康上の問題がなく日常生活を送れる期間を示す「健康寿命」の長期化を目標に掲げているが、官民が協力して十分な睡眠時間の確保に努める必要がある。

 日本では睡眠時間を削って仕事や勉強をすることが美徳とされてきた面がある。しかし、このような考えは改めなければならない。

 米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手が、最高のパフォーマンスを発揮するため、睡眠を重視していることはよく知られている。社員の集中力回復のため、昼寝制度を導入している企業もある。政府や専門家が睡眠の重要性について情報発信を強化することも求められよう。

就寝前のスマホ避けよう

 厚労省の22年の調査によれば、睡眠で休養が十分に取れていない人の割合は20・6%に上った。睡眠に関しては、十分な時間と共に熟睡につながる質の高さを確保したい。それには、朝日を浴びて体内時計をリセットすることや、就寝90分前の入浴などが効果的だ。

 さらに、就寝1~2時間前からスマートフォンを見ないようにすることも欠かせない。スマホのブルーライトが、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌を抑え、眠りを浅くしてしまうからだ。今回の診療科名追加の取り組みを機に、睡眠の大切さについて改めて考えたい。

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