
経済産業省が、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向け、南鳥島(東京都小笠原村)での文献調査の実施を小笠原村に申し入れた。
文献調査は他の自治体でも行われているが、小笠原村が受け入れれば最終処分への理解の広がりにもつながるだろう。前向きな検討を期待したい。
国が小笠原村に申し入れ
南鳥島の周辺海域では先月、海洋研究開発機構の探査船が水深約6000㍍の海底からレアアース(希土類)の試験採取に成功して注目を集めた。その南鳥島で文献調査が実現すれば、北海道寿都町と神恵内村、佐賀県玄海町に続いて全国で4例目だ。今回は、国が初めて主体的に調査の申し入れを行った。小笠原村の渋谷正昭村長は「村民や村議会の意見を踏まえながら判断したい」と述べた。
最終処分場選定に向けた調査は、3段階に分けて実施する。第1段階の文献調査は論文などから地質を確認。第2段階の概要調査はボーリングで地下の状態を確認し、第3段階の精密調査では地下に施設を造って詳しく調べる。全体で約20年かかるという。
国は原発の使用済み燃料を再利用する「核燃料サイクル」の実現をエネルギー政策の基本的方針としているが、実現には最終処分場の存在が欠かせない。使用済み燃料からウランとプルトニウムを取り出した高レベル放射性廃液のガラス固化体(核のごみ)を地下300㍍以上の深さの最終処分場に埋める必要があるからだ。
文献調査は寿都町と神恵内村では既に終了した。寿都町は全域が、神恵内村は積丹岳から15㌔以内の範囲を除く南部が適当な地域とされた。神恵内村では先月の村長選で概要調査への移行に賛成する現職が7選を果たしたが、概要調査は知事の同意が必要であり、北海道の鈴木直道知事は反対している。
最終処分場選定の取り組みは2002年に始まった。ただ、調査を受け入れる自治体は広がっていないのが現状だ。赤沢亮正経産相は今年1月、全国の都道府県知事に受け入れ拡大に理解を求める文書を送っていた。
資源の乏しい日本で核燃サイクルが実現すれば、エネルギー安全保障の観点からも有益だ。だが日本原燃の使用済み燃料再処理工場(青森県六ケ所村)の完成は再三延期され、電力会社は使用済み燃料を搬出できず、各原発の敷地内にたまり続けている。日本原燃は26年度中の完成を目指しているが、最終処分場の選定を円滑にする上でも、再処理工場を着実に稼働させることが求められる。
原発の信頼回復に努めよ
東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故から間もなく15年を迎える。事故が原発に対する国民の不信感を強めたことは否めない。最終処分場選定の取り組みが進まない背景にも事故の影響があるだろう。
ただ今後、人工知能(AI)の普及に伴う電力需要の拡大が見込まれ、原発を最大限に活用しなければ需要を賄うことは難しい。電力会社は安全性の高い革新軽水炉などの開発を進め、信頼回復に努めるべきだ。






