トップオピニオン社説イラン攻撃 地域安定への契機とせよ【社説】

イラン攻撃 地域安定への契機とせよ【社説】

1日、イランの首都テヘランで爆発後に上がる煙と炎(EPA時事)
1日、イランの首都テヘランで爆発後に上がる煙と炎(EPA時事)

 米国とイスラエルが共同でイランに対する軍事作戦を開始した。中東の安全保障環境を再構築する契機とすべきだ。

最高指導者らが死亡

 この作戦は、トランプ米大統領が「核・ミサイルの脅威を排除する」と位置付けた大規模な攻撃であり、国際社会が長年懸念してきたイランの軍事能力に打撃を与えるものだ。

 イランの核・ミサイル開発は、地域だけでなく世界の安全保障にとって実質的な脅威との見方は国際的にも共有されてきた。イランはこれまでも核関連施設の拡張や弾道ミサイル能力の強化を続けてきた。米国とイスラエルが軍事作戦に踏み切った背景には、長期にわたる核・ミサイル開発の存在がある。

 攻撃で最高指導者ハメネイ師が死亡。政権や精鋭軍事組織「革命防衛隊」幹部らの死亡も伝えられた。防空網、海軍艦艇も大きな被害を受けているとみられ、イランの反撃能力は限定的ながら削(そ)がれたとみていい。ただ、ミサイル、無人機を使ったペルシャ湾岸アラブ諸国、イスラエルへの攻撃による民間人の死者が確認されている。米兵3人の死亡も明らかになった。

 トランプ氏は当初、作戦終了まで1週間ほどとしていたが、米兵の死亡を受けて「4週間ほど」に改めた。報復の意味合いがあるのだろうが、長期化すれば双方の被害が拡大するのは必至。外交による解決も含めて早期の戦闘停止を図るべきだ。

 原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡にも影響が及んだ。既に船舶が攻撃を受けたとの報道もある。原油輸送が滞れば日本経済への影響は避けられない。

 イランは2015年に国連安全保障理事会常任理事国の米英仏露中にドイツを加えた6カ国との間で核合意を交わした。核開発を停止する一方で経済制裁を緩和するものだ。ところがトランプ政権は1期目の18年に合意から離脱。反発したイランがウラン濃縮を開始し、核爆弾製造まであとわずかと言われる濃縮度60%まで進んでいた。

 米国は1979年のイラン革命以来、イランの宿敵だ。イランはさらに「イスラエルの破壊」を国是としてきた。昨年6月と今回の攻撃は、米国とイスラエルの共同作戦であり、イランの「イスラム聖職者支配」の排除は両国にとって国益だ。

 トランプ氏はイランの体制転換も視野に、イラン国民に対して「祖国を取り戻す最大のチャンス」と呼び掛けた。国民の蜂起による体制転換を視野に入れたものだが、昨年末からの反政府抗議デモは武力で鎮圧されており、現体制の転覆につながるかどうかは見通せない。

一層の包囲網強化を

 高市早苗首相はイラン情勢について「イランによる核兵器開発は決して許されない」と主張。「周辺国への攻撃を含む地域を不安定化させる行動をやめるとともに、交渉を含む外交的解決」をイランに求めた。核開発阻止という攻撃の大義を支持しつつ、外交的解決を求めることで米国に配慮した格好だ。

 欧州諸国も攻撃に対して表立った反対は表明していない。攻撃を機にイラン包囲網をさらに強化し、地域の安定につなげるべきだ。

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