
厚生労働省の専門部会が、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った二つの再生医療製品について、製造販売承認を了承した。近く厚労相が承認し、世界初のiPS細胞由来の医療製品となる。
iPS細胞を用いた再生医療の実用化が進めば、難病に苦しむ患者に大きな希望をもたらすことができる。多くの患者を救うことを期待したい。
長期的な安全性が課題
二つの製品は、大阪大発のベンチャー企業「クオリプス」による心臓病患者向け心筋細胞シート「リハート(商品名)」と、住友ファーマのパーキンソン病患者向けドーパミン神経細胞「アムシェプリ(商品名)」。いずれも移植手術などで症状改善が確認されたとしている。歩く時に介助が必要だったパーキンソン病の患者が自力で生活できるようになるなど、これまでの治療にはなかった効果も報告されている。
iPS細胞はさまざまな組織や臓器の細胞に変えられる万能細胞で、血液や皮膚などの細胞に特定の遺伝子を導入して作られる。京都大の山中伸弥教授が2007年、ヒトで作製に成功し、12年にノーベル生理学・医学賞を受けた日本発の技術だ。昨年の大阪・関西万博では、赤い培養液の中で心臓のように拍動する「iPS心臓」が展示され、大きな注目を集めたことは記憶に新しい。
移植における拒絶反応の低減や安定供給が期待される一方、長期的な安全性などが課題とされてきた。実用化を巡っては、効果のばらつきの大きさや価格の高さなどの問題も解決する必要がある。
今回はいずれも、有効性が「推定」の段階でも一定の期限や条件の下で承認できる「条件・期限付き承認制度」で審査された。承認後も最長7年をかけて有効性などのデータを追加収集し、本承認するかを専門部会が判断する。
山中氏は「社会実装へ向けた大きな一歩を踏み出せた」とする一方で「医療として確立するには、ここからさらに多くの症例で安全性と有効性を確かめるプロセスが不可欠」としている。まずは安全性に最大限の配慮をしつつ、着実に治療実績を積み重ねてほしい。本承認されれば再生医療製品の普及加速にもつながるだろう。
iPS細胞を用いた再生医療は、脊髄損傷や心不全、1型糖尿病など、根治療法が限られている疾患を対象に、臨床試験(治験)や研究が進んでいる。特に心疾患分野では、ドナーからの移植に依存しない治療法として期待が高まっている。日本だけでなく全世界の難病患者に新たな治療の選択肢を提供することの意義は大きい。
政府は研究開発後押しを
高市早苗首相は自身のX(旧ツイッター)への投稿で、今回の二つの製品が3月上旬にも承認されるとの見通しを示した上で「創薬・先端医療分野は、高市内閣の成長戦略の重点分野の一つ。官民で連携した投資促進に向け、さらに取り組みを進めたい」と記した。高市政権は、日本が再生医療で世界をリードできるよう、製品の研究開発を力強く後押しすべきだ。






