
高市早苗首相が、北朝鮮による拉致被害者家族連絡会(家族会)と支援団体「救う会」のメンバーとの面会で「何としても突破口を開き、具体的な成果に結び付けたい」と表明し、金正恩朝鮮労働党総書記との首脳会談に改めて意欲を示した。
首相は衆院選の自民党圧勝で強化された政権基盤を生かし、全ての拉致被害者救出のため、北朝鮮との交渉を加速させなければならない。
「果てしない苦しみ」
拉致被害者の横田めぐみさんの母、早紀江さんは今月4日、90歳の誕生日を迎えた。めぐみさんとは48年間会えないままで「一緒にいれば皆さんと同じように幸せに暮らせたはずなのに、果てしない苦しみだ」と胸の内を語った。あまりにも理不尽である。何の罪もない親子を引き裂いた北朝鮮への強い憤りを禁じ得ない。
政府認定の拉致被害者17人のうち12人が帰国を果たせていない。拉致問題が長期化する中、被害者家族の高齢化が進み、未帰国の被害者の親世代は早紀江さん1人となってしまった。解決は待ったなしの状況だ。このほか、拉致の可能性を排除できない「特定失踪者」も871人に上る。
家族会と救う会は首相との面会に先立ち、全ての拉致被害者の帰国が実現するのであれば、政府による人道支援や独自制裁の解除、国交正常化交渉の開始に反対しないとする今年の運動方針を決めた。日朝首脳会談の早期実現に向けた交渉の加速を迫るものだ。めぐみさんの弟で家族会代表の拓也さんは、圧力緩和を容認する運動方針について「苦渋の選択」と説明した。首相は被害者家族の強い期待に応える必要がある。
北朝鮮が日本人を拉致したのは、朝鮮半島の「赤化統一」に向けた韓国での工作活動のためだった。拉致した日本人の戸籍やパスポートを奪ってその人に成り済ましたほか、工作員が日本人らしく見えるように日本語などを教えさせた。1987年11月に起きた大韓航空機爆破事件の実行犯、金賢姫元工作員に日本語を教えたのは、拉致被害者の田口八重子さんだった。
首相は来月、訪米してトランプ大統領と会談する。米軍は今年初め、南米ベネズエラのマドゥロ大統領を「麻薬テロを行った罪」で拘束した。拘束の際には米陸軍の特殊部隊や海上・航空戦力が投入され、ベネズエラの防衛能力を無力化した。この軍事作戦を受け、正恩氏は自らも標的にされるとの危機感を抱いたという見方も出ている。首相は拉致問題に関してもトランプ政権との連携を強化し、事態の打開につなげるべきだ。
スパイ防止法の制定急げ
北朝鮮工作員による日本人拉致には「土台人」と呼ばれる在日朝鮮人の協力者が関わった。韓国で工作活動を行うため、日本を経由する工作員もいた。
当時の日本にスパイ防止法があれば、拉致事件を防げたと指摘されている。北朝鮮の対南工作にも打撃を与えることができたかもしれない。高市政権は衆院選圧勝を受け、スパイ防止法制定に本腰を入れる構えだ。国家と国民を守るため、一日も早い制定が求められる。





