
警察庁が公表した2025年の犯罪情勢統計によると、刑法犯認知件数は前年比4・9%増の77万4142件に上った。4年連続の増加で、新型コロナウイルス感染拡大前の19年を上回った。特に匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)が関与する特殊詐欺とSNS型投資・ロマンス詐欺の増加が著しく、警察はトクリュウの壊滅に全力を挙げなければならない。
「ニセ警察詐欺」が急増
特殊詐欺とSNS型投資・ロマンス詐欺の被害額は計3241・1億円(暫定値)で、共に過去最悪を大幅に更新した。警察官を装って金銭を送らせる「ニセ警察詐欺」が急増し、生成AI(人工知能)に映像や文章の作成、自動音声応答をさせて言語や地域の壁を越えるなど、手口も巧妙化している。
主な手口は、国際電話からLINEのビデオ通話に誘導し、「あなたの口座が犯罪に使われた。潔白を証明するなら資産を提出する必要がある」などというもの。全資産を詐取されるなど被害が膨らむ傾向がある。
警察が捜査でお金を振り込ませることはない。また電話で捜査対象になっていると伝えることはなく、SNSで連絡することもない。こうした電話がかかってきた場合は詐欺ではないかと疑ってほしい。投資詐欺では「必ずもうかる」、ロマンス詐欺では「2人の将来のために投資を」などの言葉に要注意だ。
警察庁は、スマートフォンを通じたSNSやインターネット決済など、非対面の生活様式の定着が被害拡大の背景にあると分析。ネットバンキングや暗号資産を用いた送金被害が増え、銀行員やコンビニ店員による抑止が難しくなっているという。
トクリュウは中国系の犯罪組織と手を結び、東南アジアの拠点から違法行為を繰り返しているとみられる。米シンクタンク米国平和研究所(USIP)の24年の報告書によると、カンボジア・ミャンマー・ラオスを通るメコン川周辺地域には詐欺に関わる労働者が約30万人いるとされ、犯罪組織は年間390億㌦(約6兆円)を得たと推定されている。警察庁はトクリュウ壊滅に向け、東南アジアの各国当局との連携を深めるべきだ。
警察では昨年4月、捜査員が架空の身分証で闇バイトに応募する「仮装身分捜査」を開始した。詐欺被害金の受け皿などに使われる金融口座の不正売買に、警察が用意した偽口座を紛れ込ませる「架空名義口座」を用いた捜査の早期導入も図るとしている。このような新たな捜査手法を治安改善につなげなければならない。
広域犯罪への対応強化を
SNSを通じて実行役が次々に入れ替わるトクリュウによる犯罪は、都道府県警の管轄を越えるケースが多い。昨年10月に警察庁は「情報分析室」、警視庁は「対策本部」を新設した。情報分析室と対策本部が連携して捜査を行い、警視庁に管轄権がなくても警察庁長官の指示で警視庁を投入できる警察法の適用を念頭に置く。
トクリュウ捜査を巡り、警視庁を「準国家警察」と位置付ける組織再編だ。広域犯罪や国際犯罪への一層の対応強化を進める必要がある。






