
高市早苗首相が日本を訪れたスターマー英首相と首脳会談を行った。英首相の訪日は約3年ぶり、スターマー氏の訪日は2024年7月の首相就任後、今回が初めて。
2プラス2を年内開催
会談で両首脳は「欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分」との認識を共有し、「自由で開かれたインド太平洋」実現に向けた協力について協議した。その上で、サイバー安全保障に関する両国の協力関係を能力構築などにも拡大する「戦略的サイバー・パートナーシップ」に格上げすることや、イタリアを含む3カ国で進めている次期戦闘機の共同開発の加速、外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)の年内開催で一致した。
また中国を念頭に、重要鉱物のサプライチェーン(供給網)の強靭(きょうじん)化に向けた同志国の連携を確認したほか、風力発電や核融合発電分野などの産業協力拡大でも一致。さらに宇宙分野での連携に向け、新たな協議体を設置することも申し合わせた。
わが国は22年から英国およびイタリアと次期戦闘機の共同開発に取り組んでおり、23年には自衛隊と英軍の部隊間移動を巡る円滑化協定が発効。また21年には空母「クイーン・エリザベス」、25年には空母「プリンス・オブ・ウェールズ」を基幹とする英空母打撃群が日本に寄港し、海上自衛隊との間で共同訓練を重ねるなど近年、安全保障面で日英の協力が進んでいる。
いまや日英両国は「準同盟」の関係にあり、かつての日英同盟になぞらえ「新日英同盟」と呼ばれることもある。今回の首脳会談は、そのような英国との緊密な関係を改めて確認するとともに、安全保障だけでなく経済産業活動やサイバー・情報分野など、より幅広い両国関係の構築を目指す方針を打ち出したことに意義があったと言える。
トランプ米政権は一国主義を前面に打ち出し、また昨年発表された「国家安全保障戦略」では、それまでの「インド太平洋」重視の方針を見直し、西半球および米本土の防衛を優先する新モンロー主義の方針を示した。
そのため、日米同盟、特に有事の際の米国の対日防衛コミットメントの信頼性に不安や懸念が示されている。日本と同様に米国を最重要パートナーとする英国も、ウクライナやグリーンランド問題など対米関係で難しい立場に置かれており、会談ではトランプ政権との関わり方についても意見交換がなされた。
自由貿易体制や開放的な国際秩序の重要性など共通の価値観を持つ日英両国が意思疎通を図り結束を強めることは、国際社会における民主主義陣営の連携強化に資するものである。
英中接近は懸念材料
ただ懸念材料もある。訪日に先立ちスターマー首相は中国を訪れ、対中関係を改善し経済協力の進展に動いた。安全保障よりも自国の経済を優先させたとの批判が出ている。中国が絡むことで今後、日英関係が複雑化する恐れもある。英国の対中傾斜を食い止め自由陣営に繋(つな)ぎ止めるためにも、会談後の共同記者発表で高市首相が述べたように「日英両国の協力をさらなる高みに引き上げ、一層深化させていく」ことが必要である。






