
クーデターで実権を握った国軍によるミャンマー総選挙は、国軍系の連邦団結発展党(USDP)が上下両院で計339議席を得て単独過半数の294議席を大きく上回った。
2021年2月1日のクーデターで全権を掌握した軍事政権は、信任を得たとして単独過半数に胸を張る。同政権は総選挙実施で“民政復帰”を演出し、みそぎを済ませたことにしたいのだ。
排除された民主派政党
一方、国軍がクーデターで追い落とした民主派指導者アウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)は、23年に解散に追い込まれた。国軍の統治に反対する他の民主派政党も、総選挙から事実上排除された。
昨年12月末に始まった総選挙は、今年1月まで3回にわたって投票が行われた。5000人近くが立候補したが、参加した57政党の大半が親軍政党だ。公平性と普遍性が欠落した身内だけの“お手盛り選挙”では誰も納得するわけがない。
東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国フィリピンのラザロ外相は、ASEAN外相会議で記者会見し、ミャンマー総選挙について「ASEANとしては承認しない」と表明した。
一昨年に実施した国勢調査では、総人口約5132万人のうち戸別訪問で確認できたのは約3219万人で、残りの約1913万人は推計値でしかない。ミャンマー各地では民主派の武装組織「国民防衛隊(PDF)」や少数民族武装勢力による激しい抵抗が続いており、国軍が全土を実質管理できているわけではない。総選挙では投票箱すら置けない広大な地域が西部や国境周辺部にあり、78議席の投票が中止された。国政選挙とは名ばかりだ。
議会は3月に招集され、上下両院の合同投票で大統領を選出する。軍人枠の166議席と合わせると両院で占める国軍系の議席は86%を超え、国軍トップのミンアウンフライン総司令官が大統領に就く可能性が高い。4月には新政府が発足する見通しだ。
だが5年前のクーデターは、20年の総選挙が二重投票を含む「NLDの不正選挙」だと言い立てて起こしたものだ。それが自分の番となると、国軍と競合する政党にはあからさまに門を閉める「不公正な選挙」ではご都合主義もいいところだ。見せ掛けだけの選挙を、国軍は政権居座りの口実に使っているにすぎない。
国軍とPDFや少数民族武装勢力との戦闘で国内避難民は350万人を超える。軍政下で通貨チャットは暴落し、物価は高騰、外国資本が逃避した経済が混迷を深めてもいる。
軍はきっぱりと政治とは一線を引き、兵舎に帰るのがあるべき姿だ。ミャンマーに兵器を売却している中国やロシアが、影響力を増してきているのも気に掛かる。
政治犯釈放を働き掛けよ
日本政府はクーデター後、新規の経済協力を見合わせ当事者間の対話を促してきた。
これからもASEAN諸国などと連携し、政治犯の釈放をはじめ民主化を粘り強く働き掛ける必要がある。






