トップオピニオン社説東大大学院汚職 「自治」だけで防止できるか【社説】

東大大学院汚職 「自治」だけで防止できるか【社説】

当選した渡具知武豊氏(手前左)と握手する金城泰邦氏=25日、沖縄県名護市

 東京大大学院での共同研究で便宜を図る見返りに繰り返し接待を受けたとして、警視庁捜査2課は収賄容疑で同大大学院教授佐藤伸一容疑者を逮捕した。

 東大では昨年11月にも、医学部付属病院医師の准教授が医療機器選定を巡る収賄容疑で逮捕、起訴されるなど、ガバナンス(組織統治)の低下が著しい。日本を代表する大学の組織改革を急がなければならない。

 共同研究の見返りに接待

 佐藤容疑者は付属病院の皮膚科長を務めるなど“皮膚科の権威”として知られていた。逮捕容疑は、大麻草に含まれる植物性カンナビノイドに関する共同研究について、講座の設置手続きや運営、研究内容の選定などで便宜を図る見返りに、2023年3月~24年8月ごろ、高級クラブやソープランドなどで約30回にわたり計約180万円相当の接待を受けた疑い。

 この事件を巡っては、共同研究に関わっていた元東大大学院特任准教授が収賄容疑で、佐藤容疑者と元特任准教授を接待した一般社団法人「日本化粧品協会」代表理事が贈賄容疑でそれぞれ書類送検された。接待は月に2回ほどのペースで行われ、佐藤容疑者に対する1回の接待費が数十万円に上ることもあったという。

 事件が発覚したのは、代表理事が24年9月、佐藤容疑者から「講座を潰されたくなければ、現金を支払え」などと脅されたとして、警視庁に恐喝未遂容疑で被害届を提出したためだ。これが医学に携わる大学院の教授の言葉なのか。職業倫理のかけらも感じられない言動にはあきれるばかりである。

 東大の藤井輝夫学長らは記者会見で「こうした行為を未然に防げず、また早期に気付けなかったのは本学全体のガバナンスに問題があった」と謝罪した。佐藤容疑者は懲戒解雇され、付属病院の田中栄院長も引責辞任している。

 ただ、こうした問題は今回の事件にとどまらない。東大が類似事案がないか学内で調査したところ、倫理規定に抵触するものが22件あったことが明らかになった。このうち3件は高額な接待が含まれており、懲戒手続きを進めているとしている。

 藤井氏は不祥事の背景に教職員の希薄な倫理意識やチェック機能の不全、縦割りの組織風土があったとして、リスク管理の最高責任者を置くことなどを表明した。こうした対策は重要だが、根本的には「大学の自治」の問題がある。

 「大学の自治」は憲法で保障された学問の自由を守るため、外部からの介入を受けない権利のことだ。ただ教授会などの独立性が強過ぎると、不正を防止する機能が働かなくなる恐れがある。学問の自由は重要だが、不祥事が蔓延(まんえん)することがあってはならない。

 積極的に外部意見反映を

 東大は、政府が10兆円規模の大学ファンドを通じて支援する「国際卓越研究大学」の認定を申請しているが、不祥事が続発していることから「継続審査」となっている。認定を受けられなければ大きな損失だ。東大には不正防止に向け、外部の意見を積極的に反映させる姿勢が求められよう。

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