
米国のトランプ大統領の返り咲き2期目の就任式から1年を経た。「常識」の革命を掲げて再就任してから自身をモンロー主義者であることを公言するまでの諸施策は、強い米国の復活を目指しながらも横紙破りの措置を連発し、同国内および世界各地に断末魔をもたらしている。大局的な時代の変化として捉え、備えるべきだ。
西半球中心にシフト
性別は男性と女性の二つのみと定義した大統領令から出発したトランプ氏の「常識」の革命は、行き過ぎたポリティカル・コレクトネスの弊害の払拭に踏み切ったものだ。長く続いた民主党政権の下で米国社会、特に政府、行政、学校など公共の場に「多様性・公平性・包括性(DEI)」政策が浸透し、LGBT運動の影響を受けた子供たちが親も知らずに性転換手術を受ける社会になった。
トランプ政権は政府のDEI部署を閉鎖、大学には反ユダヤ主義への対応などと共にDEIプログラムの廃止を要求し、応じなければ補助金凍結を打ち出した。関連して留学生の受け入れも規制され厳格になった。
国家安全保障の問題と位置付ける不法移民と麻薬の流入を巡っては、移民税関捜査局が各地で身柄拘束の強制措置に当たり、暴動が起きて州兵投入の事態も起きている。この1年で50万~60万人余りの不法移民が強制送還され、自己帰国は160万人以上となり、不法移民は200万人以上減った。
米国の貿易赤字はバイデン前政権では毎年1兆㌦を超えるまで膨らんだが、トランプ氏は昨年4月に貿易相手国に同水準の関税を課す相互関税を発表。「米国解放の日」と称した。輸入全品目に一律10%、各国ごとに上乗せした税率一覧表を発表し、世界に衝撃をもたらした。特に貿易赤字の大きい中国に対し厳しい高関税率を示した。
このため、昨年の米国の貿易赤字は大幅に縮小しており、前政権時代と比べて半減する見通しだ。また、国内では減税を進めており、1期目の2017年に行った法人税率引き下げによる一律21%を維持し、所得税減税は25年末が期限だったが、延長することになった。
安全保障ではイスラエル軍と協力したイラン地下核施設攻撃、麻薬取り締まりを理由としたベネズエラ急襲作戦によるマドゥロ大統領逮捕、さらに西半球中心の戦略にシフトするためのデンマークに対するグリーンランド購入交渉など型破りな行動に出ている。ロシア相手のウクライナ和平交渉では手詰まり感があるが、なお働き掛けが行われている。
わが国は自立戦略進めよ
各世論調査でトランプ氏の支持率は概(おおむ)ね40%で推移しているが、国内外で軋轢(あつれき)や反感を生みながらも岩盤支持層は固めていると言えよう。
だが、11月中間選挙に臨む共和党議員・候補らにとって追い風とは言えず、下院は野党の民主党が多数になる可能性がある。両院で共和党多数の間にトランプ氏は可能な限り「米国第一」の施策を打ち出すだろう。同盟国は自立を余儀なくされるのであり、そのための国家戦略をわが国も進めるべきだ。






