イランで反体制デモが続いている。開始から2週間余り、死者は増えるばかりだ。政権側は厳しい対応を強調し、収束の糸口は見えてこない。
介入示唆するトランプ氏
現地の人権団体の12日の発表によると、死者は約650人。治安部隊がデモ隊への発砲を繰り返しているとみられ、ここ数日、急速に増加している。
全土に拡大したデモは8日、最高潮に達し、政権側はインターネットの遮断で抑え込もうとしているものの、勢いを削ぐには至っていない。
国連のグテレス事務総長が、デモへの「暴力と過剰な武力行使」を非難するなど、国際社会の反発も強まっている。
事の発端は、通貨リアルの急落によるインフレ。デモは首都テヘランのグランドバザールで始まり、瞬く間に全土に広がった。イランは国連、米国などから制裁を受け、経済運営はままならない状態が続いている。
イランではこれまでも、抗議デモが繰り返し起きてきた。2022年には、ヒジャブの着用を拒否したマフサ・アミニさんが、警察で拘束中に死亡したことで、若者や女性を中心に大規模なデモが発生、人権団体によると500人以上が死亡した。
19年には、燃料価格引き上げをきっかけとするデモで数百人の死者が出た。この時に初めて、最高指導者ハメネイ師への批判がスローガンに掲げられ、1979年のイラン革命以来のイスラム聖職者支配にほころびが生じていることをうかがわせた。
革命で廃位となった国王の息子で、米国亡命中のレザ・パーレビ元皇太子は2019年のデモを受けて、「(台頭する若い世代にとって)自由世界との間に立ちはだかる唯一のものは、この政権だ」と、体制転換、王政の復活を訴えていた。
今回のデモを受けてパーレビ氏はSNSで、トランプ米大統領に「イランの国民を助ける」ための介入を要請。トランプ氏も「いつでも出動できる」と介入の可能性を示唆している。
イランはレバノン、シリア、イエメンなどを通じてイスラム教シーア派の勢力を拡大してきた。いわゆる「シーア派の弧」だ。ところがイスラエルによる攻撃、指導者の殺害で、レバノンのシーア派組織ヒズボラは弱体化が著しく、シリアではシーア派民兵を支援していたアサド政権の崩壊で一気に基盤を失った。国内でも、指導者の暗殺、米イスラエルによる軍事攻撃などで困難な情勢が続いている。
イスラム聖職者支配の終結の可能性が指摘される。その一方で限界もある。抗議デモの全国的指導者がいないこと、革命防衛隊など強力な軍・治安部隊の存在、メディアへの統制など反体制側に不利な要因は多い。
高市早苗首相は情勢悪化に懸念を表明するとともに、実力行使への反対、平和的方法による早期の収束を呼び掛けた。
対話による平和的解決を
イラン警察長官は「暴徒を最後の一人まで逃さない」と徹底的な取り締まりの意向を表明している。無防備で抗議する国民に、治安部隊が発砲するなどあってはならないことだ。平和的解決には国民との対話という道しか残されていない。






