
中部電力が浜岡原発(静岡県御前崎市)の再稼働の前提となる新規制基準への適合性審査を巡り、想定される地震の揺れ(基準地震動)を過小評価していた疑いがあると発表した。
人工知能(AI)の普及に伴い、電力需要が急拡大する中、原発への信頼を揺るがすことは許されない。中部電は社員の安全意識の徹底を図るべきだ。
規制委「審査は白紙に」
中部電は基準地震動の策定に使う地震波を算出する際、複数の地震波の平均値を「代表波」とする手法を採用。このことは原子力規制委員会にも説明していたが、2018年以前から異なる手法で代表波を選んでいたほか、18年ごろからは平均値とは異なる地震波を意図的に代表波にしていたという。ただ、このやり方では基準地震動が小さくなる可能性がある。
中部電は14~15年、規制委に浜岡原発3、4号機の審査を申請。約9年の審査を経て、23年9月に基準地震動を1200ガル(加速度の単位)などとすることで規制委側から大筋で了承された。しかし今回の不正を受け、規制委は審査について「白紙になると思う」としている。
11年3月の東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故の発生後に導入された新規制基準は「世界で最も厳しい」とも言われる。それでも国民の間で原発に対する不安は根強いのが現状だ。
こうした中、昨年は東電柏崎刈羽原発(新潟県)や北海道電力泊原発3号機(泊村)の再稼働について地元自治体の同意が得られた。
背景には、AI普及に伴うデータセンター増加などで電力需要の大幅増が見込まれていることがある。再稼働で電気料金を低く抑えられれば、物価高対策の後押しとなることもあるだろう。再稼働が進む関西や九州は電気料金が割安だ。
これに比べ中部電は割高な火力発電に頼っているため、電気料金を引き下げられない。料金引き下げに向けて原発再稼働を焦ったことが、今回の不正につながったとみていい。だが、安全性への信頼を大きく揺るがした責任は重い。審査のやり直しで再稼働も大幅に遅れることになるだろう。
中部電では昨年11月、浜岡原発の安全工事を巡って社内ルールに反した精算手続きが多数判明し、副社長らが辞任するなど不祥事が続いている。中部電はコーポレートガバナンス(企業統治)を強化するとともに、社員の安全意識を高め、再発防止を徹底しなければならない。それができなければ、浜岡原発の再稼働への理解を得られないだけでなく、全国で稼働している原発の安全性に問題がないか懸念が強まりかねない。
安全最優先で稼働させよ
政府が昨年2月に決定した「エネルギー基本計画」では、電力需要の急増に備え、二酸化炭素(CO2)を排出しない原発を「最大限活用する」方針を明記している。
しかし今回のように電力会社が安全性を軽視すれば、原発活用に対する国民の不安がいつまでも付きまとうだろう。他の電力会社も安全最優先で原発を稼働させなければならない。






