トップオピニオン社説米のベネズエラ介入 独裁と野党弾圧に終止符を【社説】

米のベネズエラ介入 独裁と野党弾圧に終止符を【社説】

5日、ニューヨークでヘリポートから米連邦地裁に移送されるベネズエラのマドゥロ大統領(右から4人目)(EPA時事)

 米軍がベネズエラを急襲し麻薬密輸の罪などでマドゥロ大統領夫妻を拘束、米ニューヨークに連行し連邦地裁で裁判にかけている。他国で軍を用いた逮捕劇には国際法の根拠に乏しいとの批判がある一方で、長年の強権的独裁体制の下で弾圧されてきた野党の指導者や支持者、国外に逃れたベネズエラ難民は歓喜に沸いた。民主主義の回復を望みたい。

 四半世紀に及ぶ敵対関係

 ベネズエラは1999年に発足したチャベス政権が社会主義政策を取り、2007年に石油会社を国有化して米石油企業の現地資産を接収、反米外交を進めてキューバ、ロシア、イラン、中国と友好関係を築いた。13年に発足した後継のマドゥロ政権を含む四半世紀もの間、米国との間で敵対関係が続いてきた。

 が、国情は混迷の一途をたどっている。マドゥロ政権下では経済運営に破綻を来し、原油埋蔵量が世界一ながらエネルギー不足に陥り大規模な停電が発生、物不足による物価高騰などから国民の間に不満がたまり頻繁に反政府デモが起きた経緯がある。しかし、マドゥロ政権は強権的に過酷な政治弾圧を行い、逮捕者の投獄、拷問が国際問題になった。

 国連独立国際ファクト・ファインディング・ミッション(FFM)は20年に、反政府勢力への弾圧が国家規模で行われ、恣意(しい)的な拘束、拷問、超法規的殺害が行われていると指摘。24年にもFFMは国家による組織的計画的な政治弾圧を報告書で指摘した。しかし、マドゥロ政権は中国とロシアの支持を受け、国連安保理では制裁決議が成立しない構図があり、国内では政権交代の可能性の芽が摘まれた状態だった。

 このため、トランプ米政権によるマドゥロ氏逮捕には、昨年ノーベル平和賞を受賞した野党指導者マチャド氏をはじめ野党支持者や国外に逃れた何百万人もの難民から歓迎の声が上がっている。この事実は重要である。

 もともとトランプ政権は1期目にベネズエラでの政権交代に向けて支援をしていた。15年に行われた国会議員選挙で経済破綻の失政批判から野党が多数派となり、18年大統領選では主要野党がボイコットしたためマドゥロ氏の再選を国会は承認しようとしなかった。

 19年1月に野党指導者のグアイド国会議長が暫定大統領就任を宣言し、米国はいち早く承認、他の米州14カ国も続いた。しかし、ロシア軍からの兵員派遣を受けた軍がマドゥロ氏を支持したことによりグアイド氏は政権掌握に至らなかった。

 今回、米国との協調に転じたロドリゲス暫定大統領は正常な大統領・国会議員選挙を行い、民主主義の回復に努めるべきだ。

 わが国も力の備えを

 一方トランプ政権は、昨年12月に発表した国家安全保障戦略で南北米大陸の位置する西半球を最重要地域と規定している。トランプ大統領はモンロー主義者であることを公言し、米国の勢力圏とする西半球では積極的な介入政策を進めることをベネズエラで示した。

 国際秩序の変化に対応するため、わが国も力の備えを怠ることはできない。

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